特別講演&学生との対話 カオ・キムホンASEAN 事務総長
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日程:2023年07月07日(金)
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時間:15:10-16:30
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会場:福武ラーニングシアター (東京大学情報学環・福武ホール地下2階)
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言語:
英語
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主催:
東京大学東洋文化研究所
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共催:
東京大学未来ビジョン研究センター
東京大学公共政策大学院
今年は日ASEAN友好協力50周年の節目にあたります。1973年以来、この関係は地域の様々な課題に対応しながら進化を遂げ、今や互いに欠かせざるパートナーへと発展しました。不安定化、複雑化する国際環境のなかで、ASEAN(東南アジア諸国連合)のコミュニティ形成は今後どのような方向へと進むのでしょうか。また日本とASEANは地域の安定と繁栄のためにどのような協力ができるでしょうか。日ASEAN特別法務大臣会合を機に来日されるカオ事務総長をお招きし、講演と学生との対話を行なっていただきます。
※本講演会は、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたします。
7月7日、東京大学東洋文化研究所、未来構想研究所、公共政策大学院の共催により、カオ・キム・ホン東南アジア諸国連合(ASEAN)事務総長による特別講演と学生との対話が開催されました。冒頭、藤井輝夫東京大学総長が歓迎の挨拶を述べ、東京大学とASEANの教育・研究機関や学生との活発な交流について紹介しました。その後カオ事務総長が「ASEANと日本の協力−次の50年に向けて」と題した基調講演を行い、続いて学生との対話が行われました。司会は佐橋亮・東京大学准教授(国際関係論)が務め、中島隆博・東洋文化研究所所長が閉会の辞を述べました。
基調講演
基調講演の冒頭、カオ事務総長はASEANと日本の長年にわたるパートナーシップを強調しました。ASEANがこれまで築いてきた11の対話パートナーの中で、日本は最も古い対話パートナーです。カオ事務総長によれば、ASEANと日本の50年にわたる戦略的パートナーシップは、直近では法と正義の分野での協力や、インド太平洋に関するビジョンなど、幅広い分野での協力によって特徴づけられてきました。また、アジア太平洋およびインド太平洋地域でのASEANの関与の手引きである「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」は日本によって支持されています。日ASEAN協力の特徴について、カオ事務総長は「信頼」「友好」「パートナーシップ」「善意」という4つの柱を説明しました。ASEANと日本は今年、友好協力50周年を迎えますが、12月に東京で開催される日ASEAN首脳会議が、両者間のさらなる協力を促進する具体的な成果を生み出すことを期待しました。
カオ事務総長は、日ASEAN関係の将来について楽観的な見通しを示しました。また、素晴らしいこのパートナーシップの次の50年に向けて、5つの優先分野を挙げました。 A)特に若い世代に焦点を当てた人と人とのつながりの強化、B)核軍縮の必要性を含め、不確実性と複雑さを増す安全保障環境下における平和と安全の維持、C)グリーンエネルギー転換の促進、気候変動や災害リスクの軽減に関する国際協力の推進などによる地球環境の保全、D)ASEAN加盟国経済の急速な成長に伴う貿易や投資への課題への取り組み等による繁栄の創出、E)COVID-19が世界に与えた大きな影響に鑑みたパンデミックの管理。
学生との対話
カオ事務総長の講演に続き、聴講した学生から様々な質問が上がりました。その中には、インド太平洋地域における二国間協力の潜在的なリスクと限界、日本が同地域で国民皆保険制度を推進することの有効性など、現在の日ASEAN関係の評価が中心となりました。
多くの質問が、ASEANのカルチャーを形作っている基盤に触れていました。例えば、危機における不干渉原則の適用可能性について質問されたカオ総長は、ASEANは各加盟国の政治的独立と国家主権を尊重するが、不干渉政策は各国が悪事を働くことを許すものではないと説明しました。また、ASEANの統合の現状について質問されると、カオ事務総長は関税の引き下げや非関税障壁の撤廃によって、ASEAN域内の貿易や投資を促進しようとしていることが、ASEAN加盟国の経済活性化に役立っていると述べました。その上で、カオ事務総長は、ASEANはオープンで透明性の高い、ルールに基づく方法で域内の統合を促進する努力を行ってきたが、同時に、より多くの対話を通じて域外世界への関与を求めていることを強調しました。
また、ミャンマーの不安定な政治情勢、原子力の平和利用、人身売買など、地域の喫緊の課題に取り組むASEANの役割についても質問がありました。カオ事務総長によれば、提起された問題の多くはASEAN諸国にとって極めて重要なものであり、その解決策については過去のフォーラムで集中的に議論されてきたといいます。
※本講演会は、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催しました。