総長メッセージ

藤井 輝夫 東京大学総長

現代は、さまざまな人類史的な課題が、人びとの日常の暮らしのなかで露わになった時代です。気候変動・資源問題の深刻化、格差や不平等の拡大、デジタル革新の副作用の顕在化など、地球規模の複雑な課題が目前に現れています。

こうした課題の解決に取り組むためには、まだ知られていない深い海を粘り強く探るような努力が必要になります。その際、学問や大学に求められるのは、個別の学問分野を究めることに加えて、分野間はもちろんのこと社会の様々なステークホルダーとの対話を通じて、時代の要請に応える「知」を協創し、新たな公共性を支える基盤となることです。

一方、人類が抱える大きな課題に取り組むためには、社会で広く合意が得られる目標が必要です。東京大学では、国際連合が2015年に提唱した「持続可能な開発目標 SDGs: Sustainable Development Goals」を一つの参照点として活用し、具体的な活動として未来社会協創を推進してきました。

その司令塔として、総長直下に未来社会協創推進本部(Future Society Initiative:FSI)を設置し、デジタルやグリーンといった領域でのトランスフォーメーションのための教育研究、産業界や海外機関との連携など具体的な取り組みを進めています。

2019年に発足した未来ビジョン研究センター(Institute for Future Initiatives、IFI)はSDGsを中心とした未来社会の課題について分野横断型の研究を進めています。2020年8月にはグローバル・コモンズ・センターを発足し、「地球という人類の共有財産(グローバルコモンズ)」をはじめとする公共財の責任ある管理(stewardship)のための研究を開始しました。こうした取り組みを通じてIFIが、本学のFSI活動のためのビジョン作りにおいて中心的な役割を果たすことを期待しています。

IFIの特徴は、異なる分野の研究者同士ならびに研究者と社会のステークホルダーとの協創を促す「対話の場」であることです。発足から2年が経ち、協創的な研究のみならずリカレント教育などを通じた「人」の育成に取り組むなど、「場」としての役割を着実に拡張してきています。

この未来ビジョン研究センターがより一層発展していくことを心から願います。