総長メッセージ

五神 真東京大学総長 五神 真 東京大学総長

人類の活動の規模は、科学技術の革新によって飛躍的に拡大してきました。特にこの半世紀において、半導体エレクトロニクス技術、そしてその発展として登場したコンピューターやインターネットなどの情報通信技術の革新は、人類社会の様相を一変させました。そして、21世紀において、その変化はいっそう加速して続いています。こうした「デジタル革命」は産業の形も大きく変えつつあります。1次、2次、3次産業を問わず、あらゆる場面で「スマート化」が進み、経済的な価値は物から知恵や情報へとシフトするのです。労働集約型から資本集約型に移行するというこれまでの成長モデルは終わりを告げ、その延長線上にはない、知識集約型という新しいモデルへと、不連続な変化、つまり、パラダイムシフトが起きつつあるのです。このパラダイムシフトは、地方と都市、ハンディキャップの有無など、現在大きな課題となっている様々な格差を縮小する大きな可能性があります。これは、人類社会全体を調和的に発展させる中で、すべての人が参加できるインクルーシブ(包摂的)な社会へと導く変化です。

この変化の中で産学官民が協働してよい未来社会を作るため、大学は大きな役割を果たす必要があります。東京大学は指定国立大学の申請にあたって「地球と人類社会の未来に貢献する『知の協創の世界拠点』の形成」という構想を掲げました。その重要なポイントは、東京大学が社会のあらゆるセクターと連携し、「個を活かし人類全体が持続的・調和的に発展する社会」、すなわち良い社会を創ることに主体的に貢献するという宣言をしたことです。

このような大きな課題に取り組むためには、共感性の高い目標が必要です。そこで、東京大学では、国際連合が2015年に提唱した「持続可能な開発目標 SDGs: Sustainable Development Goals」を活用し、具体的な行動を推進することにしました。東京大学にはSDGsに貢献する様々な研究教育プロジェクトがあります。そして今後も、あらゆるセクターの人々がそれぞれの個性を尊重しながら国境を越えて、互いに協調し、知恵を出し合い、行動する場を提供し、より良い社会の実現に貢献したいと考えています。

未来ビジョン研究センター(Institute for Future Initiatives)は、このような背景の下に発足しました。この組織は、政策ビジョン研究センター(PARI)とサステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)の両組織の相乗効果にもとづき、持続可能な未来社会への提言に資する社会連携研究を中心としたSDGsの知を実行する組織といえます。

人類全体が直面している大きな変化のなかで未来社会を構想するにあたって、大学の知見を統合する国際ネットワークハブとして、また産学官民との共創プラットフォームとして、この未来ビジョン研究センターが発展していくことを心から願います。