センター長挨拶

 

福士 謙介 東京大学未来ビジョン研究センター センター長

未来ビジョン研究センターは、「東京大学の知性を結集した世界的なネットワークの拠点として、地球と人類社会の未来に関連する学際的かつ社会連携型の研究を推進し、持続可能な未来ビジョンの創造に広く寄与すること」を目的として2019年4月に設置され、これまで、多様な研究者が専門分野を超えて連携し、現代世界の抱える課題に取り組み、その成果を政策提言・社会提言などを通じて社会にフィードバックする活動を行ってきました。

2023年の春に創設5年目を迎えることを機に、研究部門の構成を7つから4つに再編しました。政治学・開発学・工学等の分野横断的な知見を生かしてグローバルな複合的リスクにアプローチする「地球規模ガバナンス研究部門」、アクション・リサーチ(課題解決型実証研究)を通じて協創・共学習の場としてコミュニティを再構築し、複合的な社会課題に横断的・自律的に対処可能な社会システムのガバナンスを実装する「コミュニティ協創研究部門」、科学技術イノベーションの政策・経営・社会デザインに関する学理の創出と、適切な技術の社会実装を目指す「イノベーション・ガバナンス研究部門」の3つの研究部門を新設し、民間企業や他大学等との連携を推進する「共同研究・寄付研究部門」を加えた4研究部門により研究活動を行います。今回の部門再編の目的は、研究者間の交流を促し、イノベーションを創出すると同時に、部門としてのアウトプットを大きくしてビジビリティを高めることです。また、部門の集約により、組織としての活動の方向性をより明確に打ち出していきたいと考えています。

創設後の4年間の多くはCOVID-19の影響下での活動であったため、海外研究機関との連携、自治体や地域のステークホルダーとの共同研究、フィールド調査等の活動が制約されてきましたが、ITを活用しつつ、シミュレーションや理論研究等の研究活動を精力的に進めてきました。加えて、グローバル・コモンズ・センター(CGC)の設置、著名学術誌と連携したシンポジウムの開催等、国際的にインパクトの高い活動も行ってきました。未来ビジョン研究センターにおける重要な活動は、研究者コミュニティだけではない多様なステークホルダーとの対話であり、それを通じて新しい考え方や研究分野の開発、社会実装に繋がるような研究をco-designしていくことにあります。パンデミックの終結が見えてきた中で、その間に得られた数々の新しいコミュニケーションの方法と、さまざまな形で人と人とが直に接する活動を組み合わせることで、本センターの研究活動をいっそう充実させていきます。中でも国際的なパートナーシップを構築するような活動を重点的に推進したいと考えています。

未来ビジョン研究センターは、学内他部局、研究機関、政府、企業、市民社会との連携により、よりよい未来社会の協創に向けた提言を行い、ハブとしての役割を果たすことを目指します。今後とも、学内外の皆さまの一層のご協力をお願いいたします。