• 社会提言

    No.5

    人生100年を設計する超高齢社会まちづくり研究ユニット

フレイル予防を軸とした健康長寿・幸福長寿まちづくりの実現に向けた提言

要約

日本の大きな社会課題が少子高齢化であり、なかでも後期高齢者の激増は日本社会の安定かつ持続性のある社会保障の姿、そして多世代の共生やウェルビーイング向上を実現できる社会のあるべき姿に大きな課題として立ち上がっている。特に高齢者において、人生100年時代とも言われる中で、健康寿命の延伸・幸福長寿が最大関心領域であり、その実現のために「フレイル(虚弱)」をいかに喰い留めるのかが国家戦略においても重要な鍵となっている。

フレイル(虚弱)とは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態を指す。地域社会において、フレイル(虚弱)を喰い留めるためには、フレイル概念をより広く周知・啓発し、科学的根拠に基づいた包括的な予防活動の取り組みが求められる。そして、従来の健康増進施策だけの枠に留まらず、また、フレイルのリスク保有者に対するハイリスクアプローチだけではなく、自助・互助を軸とした住民主体活動を促すポピュレーションアプローチを推進すべきである。

また、フレイル予防には高齢者個々の気づき、自分事化による意識変容とともに、住民主体の活動が盛んに行われるまちづくりが重要である。このような街づくりの推進には、産学官民連携が基盤となる必要がある。今回、社会に向けて、フレイル予防を軸としながら、高齢者の健康長寿および幸福長寿が実現できるまちづくりには、何が必要で、どう進めるべきかについて、提案する。

提言1:
わが国の健康長寿・幸福長寿を実現するために、「フレイル(虚弱)」※1の概念をより広く周知・啓発し、科学的根拠に基づいた包括的なフレイル予防活動の取り組みが求められる

提言2:
フレイルのリスク保有者に対するハイリスクアプローチ※2だけではなく、住民主体活動も含めたフレイル予防のポピュレーションアプローチ※3も推進すべきである

提言3:
フレイル予防には、「気づき・自分事化」できる個人への意識変容を促す視点と、自助・互助を基盤とする「住民主体のまちづくりを通したウェルビーイング向上」の両方の視点が重要である

提言4:
フレイル予防を軸とした健康長寿・幸福長寿のまちづくり(地域づくり)は、産学官民連携を基盤として推進する必要がある

※1.フレイル(虚弱)とは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態を指す

※2.ハイリスクアプローチとは、集団の中から「リスク要因」をもっている人(いわゆるハイリスク保有者)を選別し、その人たちに対して専門職種などが働きかけリスクの低減を図る手法

※3.ポピュレーションアプローチとは、集団・社会・環境などに対して働きかけることで、集団全体のリスクを減少させる手法

この社会提言は、東京大学未来ビジョン研究センター人生100年を設計する超高齢社会まちづくり研究ユニットの研究成果の一つです。全文は以下よりダウンロードいただけます。