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    グローバル・コモンズ・センター

地球の安全な活動領域を守るためのグローバルな生産と消費の変革/グローバル・コモンズ・スチュワードシップ(GCS)指標 (2024年版)の発表

東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)グローバル・コモンズ・センター(CGC)、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)、およびイェール大学環境法・政策センターは、最新の報告書『グローバル・コモンズ・スチュワードシップ(GCS)指標 2024年版(第4版):地球の安全な活動領域を守るためのグローバルな生産と消費の変革』を発表しました。

人間の活動は、人類の繁栄と将来の幸福にとって極めて重要なグローバル・コモンズ(人類の繁栄と安全保障が依存する、安定的で回復力のある地球システム)を毀損しており、最近の報告では、プラネタリー・バウンダリー(地球システムの限界)として定義された9つのサブシステムのうち6つが既にその境界を越えていることが示されています。本報告書は、産業生態学と環境科学における最新の研究とモデリング・ツールを基に、各国がグローバル・コモンズに影響を及ぼす国内的影響と国際的な波及効果に関する最新データを提示するもので、政策立案者によるグローバル・コモンズの保護を支援することを目的としています。

世界の生産と消費のシステムは地球のシステムを不安定化させており、G20諸国がその主な原因となっています。オーストラリア、カナダ、米国は、一人あたりの環境負荷が最も大きく、中国、米国、EUは総量において最も高い環境負荷を与えています。G20諸国は、貿易を通じて世界の温室効果ガス排出と森林破壊の70%以上に影響を与えており、高い人間開発指数(Human Development Index (HDI), 各国の健康、教育、生活水準を反映した包括的な経済社会指標)とグローバル・コモンズへの負荷低減を両立している国はありません。
貿易による環境ストレスは大きく、多くの国でGHG排出量の30%以上、森林減少と水ストレスの50%を占めています。例えば、韓国、日本、英国、EUでは、GHG排出量の3分の1以上が貿易に関係するものであり、ドイツ、インド、トルコなどの国々では、森林破壊の半分以上が海外で起こっています。EU、日本、オーストラリアなどで消費される水の半分以上は、国内消費需要を満たすために海外で消費されています。グローバル・コモンズを保護するための効果的な戦略として、こうした貿易に基づく実質的な波及効果に対処する必要があり、そのためには確かなデータと指標が必要となります。
持続不可能なグローバル・サプライチェーンの影響に対して、効果的に対処するグローバル・ガバナンス・メカニズムは存在しておらず、科学的データと洞察に基づいた効果的なガバナンスの枠組みを開発することが急務となります。本報告書は、グローバル・コモンズに対する国内外の影響を削減するための政策と道筋の定義に対して貢献する貴重なデータと統計資料を提供し、政策立案者がこれらの重大な課題に焦点をあてるよう導くものとなります。

GCS指標は、グローバル・コモンズを守るための政策立案や投資の優先順位づけに役立つ情報を提供するために、東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)グローバル・コモンズ・センター(CGC)の主導のもと、SDSN、イェール大学環境法・政策センター、システミック社、ポツダム気候影響研究所(PIK)、世界資源研究所(WRI)、と協力して、2020年から研究開発を続けているものです。

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