オンラインセミナー:Carbon Dioxide Removal (CDR)

  • 日程:
    2025年03月06日(木)
  • 時間:
    10:30-12:00
  • 会場:
    オンライン (Zoom)
  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター 持続可能な未来のための日本モデル相互比較プラットフォーム(JMIP)研究ユニット、技術ガバナンス研究ユニット

  • 言語:

    英語 (同時通訳無し)

  • 定員:

    オンライン参加300名(定員になり次第、受付を終了します)

  • 参加申込み:

    要事前申込(参加費無料) 締切:3月5日(水) 正午

    参加申込みフォームからお申込みください。

    ※主催元である東京大学未来ビジョン研究センター持続可能な未来のための日本モデル相互比較プラットフォーム(JMIP)研究ユニット、技術ガバナンス研究ユニットは、本イベントの情報を提供するため、お申込みの皆様の個人情報を収集させていただきますが、この情報は主催元以外のいかなる第三者にも開示いたしません。

定員に達したため申込みを締め切りました。
開催趣旨

東京大学未来ビジョン研究センターは、近年のCarbon Dioxide Removal(CDR)に関する動向を議論するオンラインセミナーを開催いたします。本セミナーでは、技術的進展から政策的含意まで、CDR戦略の最新の動向について概観します。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2015年のパリ協定(Paris Agreement)目標を達成するためには、温室効果ガスの排出削減だけでは不十分であり、CDRが不可欠であると強調しています。気候変動を1.5℃または2℃に抑えるには、大規模かつ持続可能なCDR手法の確立が急務となっており、こうしたワークショップでの議論は世界的な気候行動を形成するうえで重要な役割を果たすと考えられます。

プログラム
  • 10:30-10:35
    開会
  • 10:35-10:55
    “The global state of Carbon Dioxide Removal“

    Oliver Geden (ドイツ国際安全保障研究所(SWP))

  • 10:55-11:05
    “Land-based CDR and sustainable mitigation pathways”

    長谷川 知子 (立命館大学)

  • 11:05-11:15
    “CDR for Japan’s net-zero goal”

    杉山 昌広 (東京大学)

  • 11:15-11:25
    "CDR and the challenges of measurement, reporting, and verification (MRV)"

    加藤 悦史 (エネルギー総合工学研究所)

  • 11:25-11:55
    パネルディスカッション・質疑応答
  • 11:55-12:00
    閉会
講演者略歴(敬称一部略)

Oliver Geden
ドイツ国際安全保障研究所(SWP) シニアフェロー、オックスフォード大学科学・イノベーション・社会研究所(InSIS) リサーチアソシエイト。気候政策と二酸化炭素除去に関する幅広い専門知識を持ち、現在は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第3作業部会の副議長を務める。オーストリアでは、政府の炭素管理戦略(CMS)の科学評議会のメンバーでもある。カリフォルニア大学バークレー校、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、マックスプランク気象研究所(MPI-M)ハンブルク校の客員研究員を歴任。

長谷川 知子
立命館大学 教授。統合評価、気候変動緩和、生物多様性保全の研究に従事。IPCCやState of CDRにも貢献してきている。

杉山 昌広
東京大学未来ビジョン研究センター 教授。気候政策の専門家であり、IPCCやCDRの現状を含む国際的な科学的評価に貢献している。

加藤 悦史
エネルギー総合工学研究所(東京) 主任研究員。温室効果ガス削減戦略や技術評価など、カーボンマネジメントと持続可能なエネルギーシステムの研究に従事。

問い合わせ先

東京大学未来ビジョン研究センター
持続可能な未来のための日本モデル相互比較プラットフォーム(JMIP) 研究ユニット
E-mail: sugiyama-staff★ifi.u-tokyo.ac.jp(★→@に置き換えてください)

本セミナーでは、世界的なネットゼロ目標やパリ協定の達成に向けて、排出削減とあわせてCDR(二酸化炭素除去)戦略を導入する必要性が極めて高いことが強調されました。セッションでは、世界的な取り組み、陸域ベースの手法、日本の役割、そして測定・報告・検証(MRV)の課題に関する専門家による発表とパネルディスカッションが行われました。
オリバー・ゲーデン博士(ドイツ国際安全保障問題研究所(SWP))は、森林再生や湿地回復などの従来型手法と、ダイレクトエアキャプチャーや海洋ベースの手法といった新興技術の両方が不可欠であると指摘しました。しかし、現在の投資は主に自主的なカーボン市場に偏っているとも述べ、信頼性と大規模展開を担保するためには強固なMRV制度の確立が重要であると強調しました。
長谷川知子教授(立命館大学)は、BECCS(バイオエネルギー+CCS)や植林などの陸域CDRの可能性と限界について解説し、食料安全保障や生物多様性への影響とのトレードオフを指摘しながら、統合的な持続可能性戦略の必要性を提言しました。
杉山昌広教授(東京大学)は、日本のCDR戦略として、2050年までに年間約1億トンのCO₂除去が必要であること、日本がダイレクトエアキャプチャーや強化風化などの研究開発に注力していることを説明しました。一方で、カーボン市場の制度整備の遅れや森林吸収源の会計に関する透明性の課題も指摘しました。
加藤悦史博士(IAE)は、日本がMission Innovation CDR Initiativeに参加していることに触れ、日本における新興技術に対する標準的なMRV手法の整備の遅れを指摘しました。さらに、自主的市場と規制市場の連携を強化し、CDRの長期的な信頼性を確保する必要性を訴えました。

[ディスカッション・疑問対応]
パネルディスカッションでは、日本の森林炭素吸収源の会計基準の不整合、CDRのカーボンプライシングにおける役割、そして排出削減と炭素除去の目標を明確に分ける必要性について議論されました。専門家の間では、CDRを地質貯留に限定すべきか、それとも多様なアプローチを採用すべきかについて意見が分かれました。一部の専門家は長期的な解決策として地質貯留を重視するべきと主張する一方で、他の専門家は実現可能性の観点から多様な手法の採用を支持しました。