UTokyo-Cambridge Voices: Resilience and Global Risks

  • 日程:
    2021年12月15日(水)
  • 時間:
    17:00-19:00 (JST)
  • 会場:
    ZOOMでのオンライン開催となります
  • 題目:

    UTokyo-Cambridge Voices: Resilience and Global Risks

  • 言語:

    英語

  • 主催・共催:

    東京大学公共政策大学院(GraSPP)
    ケンブリッジ大学

    東京大学未来ビジョン研究センター安全保障研究ユニット(SSU)

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  • 登録方法:

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概要

Resilience to global risks is a shared concern for both Japan and the UK. In July 2021, the UK Government published a Call for Evidence to help formulate a new National Resilience Strategy. Japan issued a Fundamental Plan for National Resilience in 2018 while the Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015-2030 identified resilience as a priority. In this session, researchers from the Universities of Cambridge and Tokyo will present on submissions to the UK National Resilience Strategy and Japan’s responses to COVID-19 and the Fukushima nuclear accident.

講演者

基調報告:Dr. Matthijs Maas (Postdoctoral Research Associate at the Centre for the Study of Existential Risk, University of Cambridge)

基調報告:城山 英明 (東京大学未来ビジョン研究センターセンター長/公共政策大学院・法学政治学研究科教授)

司会:イー・クアン・ヘン (東京大学公共政策大学院教授)

東京大学-ケンブリッジ大学バーチャル対話シリーズ(UTokyo-Cambridge Voices Series)の合同シンポジウム「レジリエンスとグローバルリスク」が、東京大学とケンブリッジ大学の戦略的パートナーシップ協定の一環として開催されました。講演者は、ケンブリッジ大学実存的リスク研究センター(CSER:Center for the Study of Existential Risk)の博士課程修了後リサーチアソシエイトであるマタイス・マース(Matthijs Maas)博士と東京大学公共政策大学院の城山英明教授です。本セッションの司会は、東京大学公共政策大学院のイー・クアン・ヘン(Yee-Kuang Heng)教授が務めました。

最初にマース氏より、ケンブリッジ大学の学際的研究センターであるCSERの紹介がありました。その目的はリスクの研究と低減であり、英国政府を含むさまざまなステイクホルダーや機関にアドバイスを提供しています。次いで同氏は、グローバルな壊滅的存亡リスクに効果的に対処するレジリエンス国家戦略をどのように再構成するかという問題を提起した上で、英国の国家レジリエンス戦略に向けてCSERが提案した内容に関する分析結果を披露しました。各種専門家からなるCSERの学際的チームは、新たなレジリエンス戦略に対応して、概念的な洞察と現実的な政策面・制度面の提言の両方を取り上げました。その中で特に、策定すべき3つのポイントが示されました。すなわち、一般的なレジリエンスへのアプローチに加えてグローバルな壊滅的存亡リスクへのアプローチについても明確にすること、こうしたリスクがもたらす課題への対応において長期的アプローチをとること、より包括的かつグローバルな戦略を策定すること、です。マース氏のプレゼンテーションを受けて、ヘン教授は、われわれが現在直面しているリスクに見られる重複性と相互関連性を考えると、リスク情勢を包括的に理解する必要があること、国家のレジリエンスとグローバルなレジリエンスが密接にリンクしていること、および、断片化した状態が続いているグローバルなガバナンスエコシステムを一層発展させる必要があることについて同意しました。

城山教授は、福島原子力発電所の事故と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という2つの事例を用いて、複雑なリスクへの日本の対応について分析することから始め、これら両事例にみられる課題のいくつかを示しました。同氏が特に強調したのは、不十分な学際的コミュニケーション、科学と政治の関係(とりわけ、事故・事件後における科学側からのアジェンダ設定機能に関して)、および、オールハザード・アプローチを制度化する可能性です。2つの事例から得られた教訓をベースに、同氏は、複雑なリスクを管理するためのレジリエンスガバナンスについて、考えられる制度的メカニズムを示唆しました。提案されたオプションは、統合システムのもとでのコーディネーションの可能性、特定の時間軸での備えとレジリエンス、コネクティビティを切断あるいは分解する施策、または、さまざまなタイプの時間ディメンションのもとでリスクを管理する柔軟で状況に応じたアプローチ、です。ヘン教授は、原子力規制部門だけでなく、COVID-19の論説に関するコーディネーションにおいても、学際的コミュニケーションに関わる課題があることに同意しました。また、なぜリスク分析の中には捨象されたり耳を傾けてもらえなかったりするものがあるのか、という疑問点を強調しました。最後に、同氏は、人的資源とキャパシティという重要な論点、さらには、どうしたら専門家がもっと先を見越してアジェンダを構成できるかという問題を提起しました。

ヘン教授は専門用語に関して2つの質問を投げかけました。特に、さまざまなステイクホルダーや学問分野を通して、専門用語がどの程度共有されているかという点です。また、長期的リスクトレンドや日本の状況下でのレジリエンス計画に特有な時間軸を含めて、計画対象期間の認識についても質問しました。マース博士の回答によると、学術界はリスク関連の用語間にある微妙な違いの重要性を強調していますが、レジリエンスの確保を目的に、同じ政策が異なるリスクや災害に適用されることがしばしばあります。同氏はまた、変化するリスク情勢およびより長期的なスパンで表面化する可能性がある潜在リスクに取り組むための長期的視点の重要性について詳しく述べました。城山教授は、異なる視点を持つさまざまなステイクホルダーの間で共通の定義を持つことの難しさを指摘しました。同氏は、福島での事故後に日本が「複合災害」という概念を打ち出したことを評価しました。そして、それが、パンデミック期間中に同時発生するかもしれない自然災害などの将来的リスクトレンドへの備えを改善するための概念的根拠をもたらすものであることを示唆しました。また、リスクのタイプが異なれば、異なる計画対象期間が求められることにも同意しましたが、さまざまな波及要因とダイナミクスを伴う将来的な原子力事故に対応した長期計画を担う組織への関心を示しました。

講演者の2人は、企業の利益追求動機に反するかもしれないリスクガバナンスの意志決定をどのように行うことができるか、地震・パンデミック・サイバーアタック・テロ攻撃といったさまざまなリスクに対する備えをどの程度銀行に期待できるか、という視聴者からの質問についても議論しました。両氏は最後に、現在と将来のリスクにより適切に対処するために、人的資源の開発に向けて教育機関が何をすべきか、という点で意見を共にしました。