日米オンラインシンポジウム「国際研究協力における経済安全保障と輸出規制の課題」

  • 日程:
    2022年09月29日(木)
  • 時間:
    08:00-11:00 (JST) / 19:00-22:00 (EST:9月28日)
  • 会場:
    ZOOMウェビナーでのオンライン開催となります
    ご登録完了後、会議前日に事務局より招待URLをお送りします
  • 言語:

    日英 (同時通訳あり)

  • 主催・共済:

    主催:東京大学未来ビジョン研究センター 
    知的財産権とイノベーション研究ユニット/安全保障研究ユニット
    共催:TMI総合法律事務所

    ※未来ビジョン研究センター及び分散システム技研合同会社(DSG)は、本イベントのZoom URL情報を提供するため、また、今後の活動についての情報を提供するため皆様の個人情報を収集させていただいております。この情報はいかなる第三者にも開示いたしません。

定員に達したため申込みを締め切りました。
開催趣旨

日本では、2022年の通常国会で経済安全保障に関する4つの柱の法律が成立しました。その柱のひとつが、宇宙、海洋、量子、AI、バイオなどの分野における「官民による先端的な基幹技術の研究開発」です。
この法案は「経済安全保障法制の有識者委員会」で審議され、「高度な重要技術の特性を考慮し、自給自足の罠に陥らないよう、効果的な研究開発を進めるため、国際的・戦略的技術協力を推進すべき」との提言がなされたものです。このように、議論の過程では、特に米国との間で国際共同研究を行うべきとの意見が強調されてきました。
本提言で述べたように、日米研究協力、特に新興技術分野での協力は、日本の大学等にとって非常に重要です。例えば、東京大学をはじめとする日本の大学は、量子工学、AI、バイオテクノロジーなどの分野で米国の大学や企業と深い協力関係にあります。今後の官民研究開発の枠組みの中で、あるいは政府の関与のない場合でも、こうした関係や米国との研究協力を進めていくことが特に重要であると考えています。
このような研究協力を推進するためには、日米の法制度やガバナンスの違いが問題となります。経済安全保障の観点からも、研究機関が研究のインテグリティとセキュリティを適切に管理することは必須であり、現在のG7ワーキンググループでの議論でも原則とされています。この考え方は、現在、インテグリティマネジメントと称した日本政府の方針としても昨年発表され、各大学で実践されつつあります。
一方、実際の日米の研究協力では、両国が定めた輸出管理制度等を遵守する必要があり、その制度に大きな違いがあると研究協力に支障をきたすことがあります。具体的な相違点を列挙すると、以下のようになります。

(1) エンティティリスト(米国)とユーザリスト(日本)の相違点

(2)応用研究であっても基礎研究であり、その研究中に生じた、またはその研究に起因する技術・ソフトウェアに関する輸出管理上の免責事項の適用に関する相違点

(3) セキュリティクリアランスの有無、特許の公開制限制度の違いなど、機密性の高い研究交流の場合。

特に(1)と(2)は、大学間の学術共同研究を行う上で問題になりえると考えられています。本シンポジウムの目的は、これらの問題を日米で具体的に比較検討し、日米の制度の今後の運用と対応について議論することです。同時に、これらの制度の下での輸出管理、セキュリティ&インテグリティ管理のための人材育成についても議論したいと思います。

プログラム
  • 総合司会 柴野相雄(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

  • 開会挨拶

    城山英明(未来ビジョン研究センター・センター長)
    トム・ハインズ(米国大使館 経済・科学技術担当参事官)
    柴野相雄(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

  • セッション1
    日米研究協力のための「経済安全保障、インテグリティ&セキュリティ、輸出管理」

    登壇者1:飯田陽一(内閣官房国家安全保障局 内閣審議官)
    登壇者2:ゴンサロ・スアレス(米国務省国際安全保障・不拡散局次官補代理代行)

  • セッション2
    日米の研究協力と輸出管理、インテグリティ&セキュリティ

    登壇者1:有賀理 (内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 参事官(国際担当))
    「G7における研究セキュリティ及びインテグリティに関する議論(仮題)」

    登壇者2:トービン・スミス(米国大学協会(AAU)科学政策・国際問題担当 副学長)
    「米国の研究プログラムにおける基礎研究特例の重要性(仮)」

    登壇者3:渡部俊也(東京大学未来ビジョン研究センター 教授)
    「日米研究協力における日本の輸出管理運用の課題」

  • セッション3
    ケーススタディ&ディスカッション

    司会:上野一英(TMI総合法律事務所 パートナー弁護士)

    登壇者1:アラ・ターマシアン(ハーバード大学 チーフリサーチ・コンプライアンスオフィサー)
    登壇者2:中尾圭介(東京大学産学協創推進本部 副本部長)
    登壇者3:トッド・ウィリス(米国務省政治軍事局コンプライアンス室防衛貿易管理部 コンプライアンス・スペシャリスト)
    登壇者4:淺井洋介(経済産業省・安全保障貿易管理課長)

  • 閉会挨拶

    佐橋亮(未来ビジョン研究センター 准教授)

9月29日に日米オンラインシンポジウム「国際研究協力における経済安全保障と輸出規制の課題」が開催されました。研究開発を効果的に進めるために、日本は特に米国との国際共同研究を進めるべきだという意見がある一方で、こうした先進技術は経済安全保障の観点から輸出管理などの一定の規制も必要であることを踏まえ、各国の異なる制度をいかに調和させて自由な研究環境を守るかのバランスの重要性が議論されました。

開会に際して、東京大学未来ビジョン研究センターの城山英明センター長は、オープンな国際協力を志向する研究開発を、国内で全て進めようとしてしまう「自給自足の罠」を避ける必要があり、今後ますます重要になってくる日米間の共同研究について、本シンポジウムを両国間の法制度の違いや現場の様々な課題を認識した上で今後の方向性について議論する場としたいと述べました。米国大使館のトム・ハインズ経済・科学技術担当参事官は、日米間のアライアンスはかつてないほど強固なもので、研究現場では健全な競争と技術革新が起きているものの、昨今の世界情勢を踏まえ、国際共同研究開発のオープンな環境を悪用しようとする者がいる現実があるため、共同研究の体制を盤石なものにしながら、こういったリスクをいかに対処するかが重要だとしました。また、シンポジウムの総合司会のTMI総合法律事務所の柴野相雄パートナー弁護士は、日々グローバルな現場で法律に携わる立場として、最先端の問題意識や議論が展開されることへの期待を込めました。

※本フォーラムは、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたしました。





=シンポジウム 動画= Part1


=シンポジウム 動画= Part2