SSUフォーラム「権威主義的な地域組織」

  • 日程:
    2023年04月06日(木)
  • 時間:
    14:30-16:00
  • 会場:
    ZOOMウェビナーでのオンライン開催となります。
    ご登録完了後、会議前日に事務局より招待URLをお送りします。
  • 言語:

    英語(通訳なし)

  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター安全保障研究ユニット

    ※未来ビジョン研究センターは、本イベントのZoom URL情報を提供するため、また、今後の活動についての情報を提供するため皆様の個人情報を収集させていただいております。この情報はいかなる第三者にも開示いたしません。

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

地域組織を通じた国際協力は、自由主義的な国際秩序の一要素であり、戦後、欧州大陸で深い協力体制を築いたヨーロッパの独特な経験に大きな影響を受けています。ヨーロッパ以外の地域では、地域協定は浅いものであったり、全く成立していなかったりしました。しかし、近年、特に中東、アフリカ、中央アジアにおいて、共通の目的をもって協力する権威主義的な地域組織が台頭してきたという特徴的な現象が見られるようになりました。こうした動きを記録し、その帰結を評価することを目的としたプロジェクトで、一つ分かったことは、より権威主義的な組織ネットワークへの加盟は、政治的自由化や民主化の見通しに悪影響を与えるということです。本フォーラムでは、この基調報告に基づいてディスカッションする予定です。

登壇者

基調報告:ステファン・ハガード
カリフォルニア大学 サンディエゴ校 教授

討論者:渡辺紫乃
上智大学 総合グローバル学部 教授

司会:佐橋亮
東京大学 東洋文化研究所 准教授

開会挨拶:高原明生
東京大学 法学政治学研究科 教授/SSUユニット長

※本フォーラムは、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたします。

4月6日、東京大学未来ビジョン研究センター安全保障研究ユニット(SSU)はハガード教授をお迎えし、基調報告として、権威主義的な地域組織の台頭とその民主主義への影響についてお話しいただきました。ハガード教授の報告に続けて、渡辺紫乃教授(上智大学総合グローバル学部)が討論に加わり、その後、フロアから質問を募りました。同フォーラムでは、佐橋亮准教授(東京大学東洋文化研究所)が司会を務め、高原明生教授(東京大学法学政治学研究科教授・SSUユニット長)が開会の挨拶を行いました。

基調報告

ハガード教授の研究プロジェクトは、リベラルな国際秩序を脅かす「民主主義の後退」(democratic backsliding)の要因として地域組織の役割に着目するものです。権威主義的な地域組織が民主主義の後退に与える影響についてはまず、計量分析を用いた説明がなされました。分析対象は、1951年から2010年までの60年間にわたる103の権威主義国を記録したパネルデータです。その国の当該年度と翌年以降の民主主義のスコアの差分を従属変数、加盟している地域組織の平均的な民主主義のスコアを独立変数としたモデルを分析した結果、ある国が加盟する地域組織が権威主義的であればあるほど、その国の民主主義の度合いは低下するということが分かりました。

ハガード教授は、権威主義的な地域組織への参加が当該国の民主主義に対して与える因果効果を説明するにあたり、以下3つのメカニズムを提示しました。第一に、資金援助や相互防衛協定、合同軍事演習、軍事介入などを通じて、地域組織は権威主義的な指導者の権力基盤を固めたり民主的な指導者の出現を防止したりできること。第二に、テロ対策として警察協力や情報収集を加盟国間で行うことで、地域組織は民主派を「テロリスト」とのレッテル貼りをして彼らの力を抑えることができること。第三に、不干渉主義や社会的安定といった価値を強調したり権威主義的な現職指導者に有利な選挙監視を行ったりすることで、地域組織は権威主義国の現状追認に関する正当化根拠を提供することができること。ハガード教授は、こうした視座から権威主義的な地域組織の動きを丹念に追跡することが、今後の研究の課題でもあり、政策論上の要請でもあると述べ、基調報告を締めくくりました。

ディスカッション及び質疑応答

ハガード教授の報告を受け、渡辺教授がコメントと質問を行いました。まず、権威主義的な地域組織の定義について、ハガード教授は、権威主義的な加盟国が多ければ多いほど地域組織はより権威主義的なものであると定義しますが、渡辺教授によれば、加盟国の数だけでなく、当該機構における政策決定プロレスもまた重要な要素です。次に、地域組織をアジア地域、アフリカ地域、ラテンアメリカ地域などに分けて、それぞれで分析を行うと、個々の地域の相違が見られて興味深い結果を得ることができるのではないかという提案がありました。さらに、2010年以降には中国、インド、ロシアの台頭など、権威主義国において興味深い現象が見られるにもかかわらず、2010年までに限定して分析を行ったのはなぜか、近年の権威主義国にはそれ以前のものと比べてどのような特異性が見られるか、そして権威主義による挑戦に対して民主主義国はどのように応答すべきか、といった質問を提示して、討論を締めくくりました。

ハガード教授は、これらの問いを受けて、データに関する課題については現在対応にあたっている最中であるが、地域組織における権威主義国の数だけでなく政策決定プロセスも考慮に入れるべきだという指摘は、権威主義国の影響力を過小評価しないために必要であると述べました。近年の権威主義国の特異性については、権威主義国同士の地域組織を通じた協力が、近年見られるユニークな点であると主張しました。最後に、民主主義国は権威主義的な地域組織といかに建設的に関与していくかということを持続的に考えるべきだと回答しました。

その後、佐橋准教授からは、地域組織の存立を支える大国の存在についてはどう考えるかという問いが発せられ、高原教授からは、地域組織の設立にあたりどの国がどのような目的で主導権をとったのか、他国はその設立目的を理解した上で加盟したのか、などを考慮する必要がある旨が指摘されました。フロアからは他にも、権威主義的な地域組織と国内の政治体制はどのような関係にあるのか、早い段階で地域組織を形成した欧米諸国には先発優位があるのか、権威主義国が「テロとの戦い」など民主主義国の戦略を学び自身の正当化に利用しようとすることについてどう考えるべきか、といった問いが寄せられ、最後まで活発な議論が交わされました。

 

*本フォーラムは、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたしました。

*同時通訳はございませんので、動画は英語のみの音声となります。

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=SSU Forum= Part2