SSUフォーラム「北朝鮮の核-ここからどこへ向かうのか?」

  • 日程:
    2024年01月24日(水)
  • 時間:
    17:00-18:00
  • 会場:
    Zoomによるオンライン
    ご登録完了後、会議前日に事務局より招待URLをお送りします。
  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター 安全保障研究ユニット

  • 言語:

    英語(日本語同時通訳なし)

  • お申込み:

    下記お申込みフォームからお申し込みください。

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定員に達したため申込みを締め切りました。
開催概要

数十年にわたる二国間、複数国間、そして多国間の努力は、北朝鮮の核兵器および核運搬システムの開発を阻止することはできませんでした。 北朝鮮の核開発能力は、地域的、世界的な安全保障上の脅威であり、国際秩序とその制度に挑戦しています。中国とロシアは国連安全保障理事会で北朝鮮を庇護していますが、一方でバイデン政権が平壌に関与しようとする試みは拒絶されています。 エドワード・ハウエル(『North Korea and the Global Nuclear Order: When Bad Behaviour Pays』OUP, 2022の著者)と、元駐平壌英国大使のアラステア・モーガンが、米国と英国を含む同盟国の状況と政策の選択肢を評価し、核を持った北朝鮮と共存するしかないのかどうかを問います。

登壇者

開会挨拶:飯田 敬輔
東京大学 公共政策大学院(GraSPP) 院長 / 教授
講演者1:エドワード・ハウエル
オックスフォード大学 クライストチャーチ・カレッジ 講師
講演者2:アラステア・モーガン
元在朝鮮民主主義人民共和国英国大使/東京大学大学院公共政策大学院 東京カレッジ潮田フェロー
司会:イー・クアン・ヘン
東京大学 公共政策大学院(GraSPP) 教授

1月24日、東京大学未来ビジョン研究センター安全保障研究ユニットは、エドワード・ハウエル講師(オックスフォード大学)及び元駐北朝鮮英国大使アラステア・モーガンをお迎えし、基調講演として、核を持った北朝鮮に対する米国や英国を含む同盟国の対応状況や関連政策の評価についてお話いただきました。同フォーラムでは、イー・クアン・ヘン教授(東京大学)が司会を務め、飯田敬輔教授(東京大学)が開会の挨拶を行いました。

基調講演

冒頭、エドワード・ハウエル講師から、北朝鮮との対外関係及び北朝鮮当局の視点、北朝鮮の過去の行動等に見られるその戦略の分析、北朝鮮の今後について説明がありました。まず、今日の北朝鮮の核ミサイル能力について説明した後、北朝鮮とロシアとの関係強化の動きについて指摘がありました。また、北朝鮮が米国や韓国、日本をどう見ているかについて北朝鮮側の対外メッセージ等の分析を加えながら解説がありました。特に、朝鮮戦争以降、北朝鮮が米国、韓国といった「敵国」との関係をマネージする上で、どのような戦略をとってきたかについてハウエル講師の考えが示されました。さらに、朝鮮半島情勢について、韓国内政にも触れつつ説明がありました。今後の見通しについては、北朝鮮の核能力の向上、米朝関係や朝鮮半島の南北の関係の冷え込み(南北統一の可能性の低下)から、先行きは明るいとはいえないこと、今後の戦争が起きる可能性について、金正恩体制は自国の破滅は望まず、全面的な戦争は望まないものの、引き続き挑発行為を行う等攻撃的になっていく可能性が高いといった指摘がありました。最後に、これに対して、米国、韓国、日本といった同志国が一層連携して対応する必要があるとの主張がありました。

アラステア・モーガン元駐北朝鮮英国大使からは、冒頭、当面は現実的に北朝鮮が核を持つことは避けがたい現実であるが、英国を始め国際社会は北朝鮮の非核化を諦めるべきではないとの考えを述べつつ、英国・北朝鮮関係の今後に係る期待と見通しを述べました。北朝鮮が、戦争遂行のための核能力を獲得しようとしていることは明らかであるとしつつ、北朝鮮の対外メッセージ分析(先制攻撃はしないと述べていることの意味)、さらに、北朝鮮による対韓姿勢、北朝鮮が核ミサイル核開発を米国や韓国への抑止や威圧として活用していること、北朝鮮内の関係省庁のパワーバランスの変化等についても説明がありました。北朝鮮の対外政策については、ロシアのウクライナ侵略への北朝鮮による支持には戦略的な意義があること、武器の取引も一定程度双方の利益となっていること等について指摘がありました。北朝鮮と中国との関係については、中国側はより慎重に見ているものの、友好ムードを醸成しようとする外交的な動きも見られるとのコメントがありました。米朝関係については、バイデン政権の下で、米国が交渉の目標達成する可能性は低く、引き続きインテル収集や共同訓練を行い、抑止を効かせつつ、北朝鮮に対しても安心の供与(敵対的、攻撃的な政策ではない)をとり、危機への備えもしていく必要があること、仮にトランプ政権が誕生する場合、北朝鮮側は、核開発はあきらめることは無いにしても、トランプ政権側と意思疎通を試みる可能性があること等について触れました。
その後、フロアがオープンとなり、活発な議論が行われました。

質疑応答

まず、朝鮮半島を巡る戦争の可能性について、特に最近の金正恩の言動をどう分析するか質問がありました。これに対して、スピーカーの二人からは、今後の可能性については憶測の域を出ないが、全面的な戦争のリスクは金正恩も理解している一方で、北朝鮮は、対外的な抑止、あり得べき米国新政権を見越した交渉のステーク向上(最終的には半島からの軍の撤退を目指す等)、米国による近年の抑止力の低下、韓国等の脆弱性の露呈といった様々な理由で、今後挑発行為を強める可能性があり、警戒が必要である旨の応答がありました。

また、北朝鮮とロシア及び中国の役割、特に、北朝鮮はロシア支援の代わりに何を得ているのか、中国と北朝鮮の関係は今後更に強固になるのか、中国は北朝鮮によるあり得べき戦争をコントロールできるのかといった質問がありました。これに対しては、二人のスピーカーから、北朝鮮がロシアから得ているものは分からないが、戦術的な利益に加え、より大きな戦略的な意義も重要と考えられること、中国はロシアに比べて(北朝鮮との関係で)より慎重な姿勢を見せていること、北朝鮮は核開発について自国の能力を高めているものの、引き続き外からの技術支援が必要と思われること、北朝鮮とロシアとの関係は、今の時点では取引上の関係に留まっており、金銭や技術等の報酬や、反米国でまとまっている状況であること等の指摘がありました。最後に、対北朝鮮で国連が果たす役割についても質問があり、ハウエル講師から、制裁措置等一定の効果はあるが、国連安保理の機能不全等の課題もあるといった応答がありました。