SSUフォーラム「経済的威圧への対応:日米における議論を中心に」

  • 日程:
    2024年08月19日(月)
  • 時間:
    16:00-17:30
  • 会場:
    Zoomによるオンライン
    ご登録完了後、会議前日に事務局より招待URLをお送りします。
  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター 安全保障研究ユニット

  • 共催:

    亜細亜大学アジア研究所「インド太平洋における貿易投資政策と経済安全保障の行方」

  • 言語:

    日本語 (英語同時通訳あり)

  • お申込み:

    下記お申込みフォームからお申し込みください。

    ※東京大学未来ビジョン研究センターと亜細亜大学アジア研究所は、今後の活動についての情報を提供するため皆様の個人情報を収集させていただいております。
    この情報はいかなる第三者にも開示致しません。

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

経済と安全保障との境目が不明瞭な今日の国際情勢下において、経済的威圧にどう対応するかは喫緊の課題です。本フォーラムでは、日米における経済安全保障分野、とくに経済的威圧への対応に関する議論のトレンドを概観します。両国における議論の類似点及び相違点を考察した上で、今後の展望について議論します。

登壇者

基調講演:塩尻 康太郎(ウッドローウィルソン国際学術センター 客員研究員)

討論者1:久野 新(亜細亜大学 国際関係学部 国際関係学科 教授)

司会/討論者2:佐橋 亮 (東京大学 東洋文化研究所/未来ビジョン研究センター 准教授)

 

※本フォーラムは、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたしました。

8月19日、東京大学未来ビジョン研究センター安全保障研究ユニットは亜細亜大学アジア研究所との共催で、塩尻康太郎客員研究員(ウッドローウィルソン国際学術センター)をお迎えし、日米における経済的威圧への対応の議論について基調講演をいただきました。発表の後、久野新教授(亜細亜大学)と佐橋亮准教授(東京大学)が議論に加わり、その後、聴衆から質問を募りました。同フォーラムでは、佐橋亮准教授が司会を務めました。

基調講演
冒頭塩尻研究員から経済的威圧の定義について、米国やEU、日本の事例の紹介がありました。その後、経済的安全保障、エコノミックステイトクラフト、経済的威圧を巡る概念や、日米における議論について説明いただきました。また、経済的威圧に関する法的側面について、WTOとの関係や一般国際慣習法、国内法との関係等について議論いただきました。加えて、その政治的・経済的側面についても説明がありました。その後、経済的威圧への対応について、分析(現状理解、データ、産業界等との連携等、抑止(対抗措置型の懲罰的抑止と効果減殺型の拒否的抑止のアプローチの検討)、対抗(ACI等の事例も参考にしつつ)との観点からご説明がありました。最後に、今後の展望として、日本の取組、日米やG7等同志国の連携、経済界・官民協力の可能性等について指摘がありました。

ディスカッション及び質疑応答
次に、ディスカッションとして、久野先生から、Eaton and Engersが論じた「抑止が機能するための条件」について紹介しつつ、経済的威圧に対する対抗措置の導入が抑止として機能するかについて議論いただきました。特に、EUのACIが規定する内容について、国家責任条文草案等との関係にも触れながら、Eaton and Engersの条件にどう当てはまるかについて先生の見方を述べられました。最後に、「日本でも威圧への「対抗措置」発動を可能とする制度を導入すべきか?」、「対抗措置型ではなく、威圧の効果減殺型の枠組みを導入する方が現実的ではないか?」といった点について質問を投げかけられました。
次に佐橋先生からは、経済的威圧の概念整理や特徴について触れつつ、威圧への対応の在り方、中国の威圧の特徴や米国の態度、安全保障理論からの含意について説明がありました。特に、威圧行為の主体と対象について、その対象が必ずしも政府ではなく、産業や民間セクターとなることが通例であることの指摘がありました。その後、日本としての対応について、国際規範の形成、懲罰的抑止観に基づく措置の是非、政府と民間の連携の在り方等について議論いただきました。
その後、フロアがオープンとなり、活発な質疑応答が行われました。例えば、EUのACI等の対抗措置のWTO等国際法上の整合性の評価(DSU23条との関係、国家責任条文、安保例外適用可能性)について質問があり、それに対する明確な答えはないものの、例えば米国内の議論としては安保例外を広く解釈することによる正当化がよく見られる旨の指摘がありました。また、中国による威圧行為の特殊性(他国による威圧行為との違い)について質問があり、例えば、恣意性、透明性といった側面が指摘されることもあるが、経済的威圧の定義の外縁を広げれば、米欧の行為との差はそれほど無いとの見方もある、例えば米国の通商法301条による措置や半導体等の輸出規制も経済的威圧に含まれるといった指摘もある、また、中国の威圧行為は創造性/独自性に富んでおり、非公式な手段を活用することが多い、(米国と比して)一見してWTOルール(SPS協定やAD協定等)に整合的に見える措置をとる傾向にあるといった側面も指摘がありました。さらに、威圧を受けた第三国の支援の対象や手段についても質問があり、IPEF等の取組にも触れつつ、同志国間での代替物質の融通の取組、今後EPA・FTA見直し等の中で被威圧国に対する関税引下げ等による優遇措置導入、貿易プロモーション活動の工夫等の可能性について指摘がありました。その他にも、威圧への対応におけるWTO紛争解決手段の有用性、民間企業との協力の在り方(通報窓口の設置、情報保全等による企業が情報提供しやすい環境の整備等)についても議論が行われました。

*本フォーラムは、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたしました。

=動画= Part1


=動画= Part2