シンポジウム:サステイナブルな財政と消費税

  • 日程:
    2019年06月05日(水)
  • 時間:
    14:55-16:40
  • 会場:
    東京大学本郷キャンパス 情報学環・福武ホール 福武ラーニングシアター(地下2階)
    地図
  • 使用言語:

    日本語(This seminar will be conducted in Japanese)

  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター グローバル経済リスクの分析と政策研究ユニット

  • 定員:

    100名

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

本シンポジウムでは、財政の全体像、その中での税制、とりわけ消費税の役割、また消費税の特例についての原則などに関して、経済学の知見を改めて確認することを目指します。

【基調講演およびパネリスト】
持田信樹氏(中央大学総合政策学部教授、前東京大学大学院経済学研究科長・経済学部長)
パネリスト
竹中平蔵氏(東洋大学国際学部グローバル・イノベーション学科 教授)
星 岳雄氏(スタンフォード大学 教授)
佐藤主光氏(一橋大学国際・公共政策研究部 教授)

司会 植田健一(東京大学大学院経済学研究科/公共政策大学院/未来ビジョン研究センター 准教授)

プログラム
  • 14:55-15:00
    講演者のご紹介
  • 15:00-15:30
    持田信樹 教授 基調講演

    「サステナブルな財政と消費税」 資料(PDF)

  • 15:30-16:40
    パネル討論

    竹中平蔵教授
    星岳雄教授 資料(PDF)
    佐藤主光教授 資料(PDF)

     (後半、Q&A)

6月5日(水)に、東京大学本郷キャンパス情報学環・福武ホールにおいて約120名の参加を得て、公開シンポジウム「サステイナブルな財政と消費税」が、未来ビジョンセンターのグローバル経済リスクの分析と政策研究ユニットの主催、植田健一ユニット長の司会により、開催されました。本シンポジウムは、ともすれば政治的な力関係や声の大きさで決まりがちな財政論議、とりわけ消費税をめぐる議論に、経済学の専門家から知的な解決策を示すことを目的とし、討論を行いました。

基調講演として、平成4年より平成31年3月まで27年間にわたり本学経済学部で教鞭をとられ、最後の二年間は経済学部長・経済学研究科長を務められたのち退官された、財政学の泰斗である持田信樹中央大学教授より、我が国の財政状況と消費税をめぐる議論について、最新の著書「日本の財政と社会保障:給付と負担の将来ビジョン」(東洋経済新報社)に基づいて、わかりやすく全体像を説明いただきました。下記、要約です。

基調講演:持田信樹中央大学教授

 

•世界各国の福祉水準を、最小限の救貧策のみを行う低福祉、一般財源で全ての人の様々なニーズに応える高福祉、その中間に位置し、(一般財源でなく)社会保険料を主な原資として原則負担に応じたサービスを提供する中福祉という3類型に分けられる。我が国は中福祉の国であり、それは国民の意識調査などの結果から考えると今後も変わらないであろう。

•現行の社会保険料は非常に逆進的であり、それを和らげるためには一般財源(所得税や消費税)で補完することが望ましい。しかし、歳出増加の大きな比重を占める高齢化に伴う年金や医療などへの支出に対し、所得税では現在働いて所得を稼いでいる現役世代が払うことになり、世代間の公平の観点からは望ましくない。誰もが負担し安定的な消費税に頼るのが筋である。

•消費税自体も多少逆進的である。しかし、(食費への)軽減税率は、理論的にも(例えば金持ちの食費は多額なことなどあり)逆進性を緩和するものとして支持しにくい。給付型税額控除を導入して、ピンポイントで低所得層の負担を軽減するのが世界の潮流だ。

•消費増税による駆け込み需要とその反動は消費の実現時期がシフトしただけだ。景気に影響するのは増税による実質可処分所得の目減りであるが、これは当然、想定されるべきものとすべき。個人消費の落ち込みは、むしろ将来への不安の影響が強いことが実証的に確かめられている。したがって、消費増税で年金・医療・介護等の財政基盤をしっかりと作ることが、むしろ将来への不安を取り除き、景気に好影響を与えるはず。

•財政の持続可能性には様々な議論があるが、少なくとも小渕政権以降、財政を均衡させようという安定したルールはデータから読み取れず、政府債務対GDP比は発散経路にある。国債金利が未だ上昇しないということに関しては、我が国特有の状況も考えつつ研究を進めるべき。

全体の様子

 

その後、竹中平蔵東洋大学教授、星岳雄スタンフォード大学教授、佐藤主光一橋大学教授によるパネル討論がなされました。多くが持田教授の論点をサポートするものでしたが、下記特に異なるところを要約します。

-(竹中教授)歳出をコントロールしないで、消費税率を上げてしまうと、かえって財政規律が緩み、財政がサステイナブル(持続可能)にならない。従って、まず歳出をコントロールするべき(小泉政権ではそれができていた)であり、その後必要があれば消費税率を上げるべき。政策には手順が重要。

-(星教授)消費税の逆進性には、軽減税率よりも、所得階層別の給付金制度との組み合わせの方が、はるかにわかりやすく、かつターゲットを絞っているので効率的。この案には、多くの経済学者がウェブ上で賛成している(https://sites.google.com/view/suggestiondifftaxpublic/)。

-(佐藤教授)財政再建が進まない理由の一つは、奇策に頼ろうとするのが問題。物価の財政理論、ヘリコプターマネー、MMTと、毎年のように、奇策が次から次へと語られ、それらが一向に効かないまま財政が悪化してきた。消費税は他の社会保障財源である社会保険料に比べて経済的にみて望ましい性格をもっている。奇策を考えることはやめ消費増税などで、すぐに着実に財政再建を始めるべき。

その後、植田ユニット長の司会により、Q&Aとそれに伴う自由討論がなされました。主なものは下記の通りです。

-(佐藤教授)欧米では「付加価値税」と呼ばれ、各中間財の生産の段階で、その付加価値に税を取ることになっているが、例えば GAFAのようにどこで生産しているかわからず、本来支払われた国で税が取れなくなっている。そこで「消費税」として、消費した国で税を取る方向に、国際的に進んでいる。その意味で日本の消費税は先んじている。

-(佐藤教授、星教授)現行の歳出を仮定すれば、財政をサステイナブルにするには、ゆくゆくは消費税率は10%どころかIMFの15%の試算のほか、さらに大きい税率が必要との試算もある。

-(竹中教授)歳出のコントロールには、上限などのルールを決める必要がある。適度な「歳出キャップ」など。特に、社会保障改革、地方分権、エネルギー政策に取り込むべき。

-(佐藤教授)(マクロ的歳出上限の議論以外にも)ミクロ的にどの政策が有用かというエビデンスに基づいた歳出の順位づけも必要。

-(竹中教授、星教授)給付金の議論は、ベーシックインカムの議論となる。これは、今後の議論の中心になるのではないか。

(以上)