東京大学伊藤国際学術研究センター会議 2018年ノーベル平和賞 デニ・ムクウェゲ医師来日講演会 「平和・正義の実現と女性の人権」

  • 日程:
    2019年10月04日(金)
  • 時間:
    12:30-15:00(11:30受付開始予定)
  • 会場:
    東京大学本郷キャンパス伊藤国際学術研究センターB2F 伊藤謝恩ホール
    地図
  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センターSDGs研究部門
    科研基盤A「気候変動と水資源をめぐる国際政治のネクサス-安全保障とSDGsの視角から」

  • 共催:

    コンゴの性暴力と紛争を考える会(ASVCC)
    科研基盤B「紛争下の資源採掘と人権侵害-今後の紛争鉱物取引規制がもたらすメカニズム変化」

  • 協力:

    三菱財団
    高木仁三郎市民科学基金

  • 定員:

    400名(先着順)

  • 言語:

    日本語、英語、フランス語(同時通訳有)

  • お申込み受付期間:

    2019年9月10日(火)10:00~2019年9月25日(水)17:00
    ※お申込み人数が上限に達したため、9月12日(木)4:00を持ちまして受付を終了いたしました。
    なお、事前登録のない方は入場いただけません。また、「シンポジウム参加受付自動返信メール」が届いていない方は、登録が完了していない可能性がありますのでご注意ください。

  • 留意事項:

    以下の留意事項をご参照・ご了解の上、お申込みください。

    1)受付にて本人確認を行います。以下の2点を必ずご持参ください。
    ・「シンポジウム参加受付自動返信メール」のプリントアウト
    ・顔写真付身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード、学生証、在留カードなど)
    ※本人確認ができない場合ご入場いただけませんので予めご了承ください。

    2)セキュリティ対策について
    ・入場時に係員による手荷物検査を実施いたします。
    ・ビン、缶、ペットボトル、水筒等の飲料物、傘(折り畳み傘も含む)、危険物の持ち込みはお断りいたします。
    ・大きな手荷物はクロークにお預けください。
    ・講演会の実施を妨げる迷惑行為を行った場合、主催者の指示を遵守いただけない場合は、退場いただくことがあります。

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

コンゴでは1996年以降紛争が続き、累計で600万人の犠牲者が出てきました。特にコンゴ東部では、豊富な鉱物資源を資金源として100組織を超える武装勢力が闘争を続け、住民に対する人権侵害を行っています。その人権侵害の一環として、組織的な性暴力が行われています。持続可能な開発目標(SDGs)では、第5目標に「ジェンダー平等」、第10目標に「人や国の不平等をなくそう」、第16目標に「平和と公正をすべての人に」を掲げていますが、コンゴはこれらの目標から最も遠い国です。今回の講演会では、コンゴの問題解決に取り組むムクウェゲ医師から、コンゴ東部における紛争下の性暴力の実態を聞くと同時に、紛争研究に取り組む研究機関や紛争解決に尽力する援助機関などの関係者と議論する機会を設けることで、紛争下の性暴力が発生する構造的要因を理解し、社会的弱者の人権が擁護される条件としての平和と正義の実現方法を議論します。

プログラム
  • 開会挨拶

    五神 真 東京大学総長

  • 主旨説明

    藤原 帰一 東京大学未来ビジョン研究センター センター長

  • 基調講演

    デニ・ムクウェゲ パンジ病院 医長

  • コメント1

    隈元 美穂子 国連訓練調査研究所 (UNITAR) 所長

  • コメント2

    華井 和代 東京大学未来ビジョン研究センター 講師 / コンゴの性暴力と紛争を考える会 副代表

  • 質疑応答 (パネル形式)
  • 閉会挨拶

開会あいさつ:五神真 東京大学 総長

はじめに五神総長は、ムクウェゲ医師のノーベル平和賞受賞に祝意を述べました。その上で、世界では多くの分断が進行していることへの危機感を、持続可能な開発(SDGs)の理念に基づく新たなグローバル・エコシステムを構築する必要性、および東京大学が、地球と人類社会の未来に貢献する『知の協創の世界拠点』になるという構想を述べ、ムクウェゲ医師の講演からコンゴで起きている問題の実態を理解する必要性を唱えました。

主旨説明:藤原帰一 東京大学 未来ビジョン研究センター長

藤原センター長は、現在のSDGsへの取り組みが日本国内を重視する風潮になっていることに対する問題提起を行い、大学が国境を超える責任を踏まえて現在取り組むべき課題を考えたい、という本会の主旨を強調しました。

基調講演「平和・正義の実現と女性の人権」:デニ・ムクウェゲ医師

コンゴでは1996年から紛争が続き、死者600万人、難民・国内避難民400万人を数え、何十万人という女性が性暴力被害に遭ってきました。ムクウェゲ医師が運営するコンゴ東部のパンジ病院には毎日平均10人の被害者が運び込まれています。被害者への支援は、医療ケア、精神ケア、経済支援、法的支援の4つの柱が重要ですが、問題の根本的解決に向け特に「不処罰の課題」に取り組む必要性を医師は強く訴えました。今日、女性の平等を保障する国際条約は数多く存在します。しかし、現実にはその権利が保証されない事態が各国で蔓延し、性暴力を継続させる原因となっています。ここで医師は、2010年に国連人権高等弁務官事務所が発表した、コンゴにおける人権侵害と国際人道法違反に関する617件の犯罪を記録した「マッピング報告書」に言及しました。犯罪に関わった人物は現在も権力をもち、報告書内の勧告は何一つ実施されていないといいます。最後に、本年10月30日に設立する性暴力被害者のためのグローバル基金について紹介し、人類の危機である性暴力のない社会の実現に向け、沈黙を破って行動することを強く呼びかけました。

パネル・ディスカッション

パネル・ディスカッション冒頭では、隈元氏が国際連合の性暴力への取り組みを紹介しました。国際連合は安保理決議1325、2467等、本課題に関する重要な決議を行う他、様々な機関が紛争予防や女性のエンパワメント向上のための具体的な活動を行っています。

続いて華井氏は、紛争下の性暴力が起きる構造と現在行われている取り組みを整理し、日本の取り組みに対し1. 実態の把握 2. 取り組み成果の検証 3. 解決に向けた議論の不足を指摘しました。

コメントに続き、紛争予防に対する国連の取り組みと性暴力被害者への補償に期待される紛争解決効果を中心に議論を行いました。ムクウェゲ医師は、国連が性暴力に関する適切で重要な決議を行っても、それを現実に実施する段階では、適切な処罰や賠償がなされないという課題があることを主張しました。そして、新たに設立するグローバル基金は、専門知識や賠償手段を持たない国をサポートし、被害者への賠償とケアを保証することで、それらが当たり前の権利であることを示す機能を持つことも補足しました。参加者との質疑応答では、以下の質問が寄せられました。

Q. ムクウェゲ医師は日本の政府、市民に対して何を期待するか。
A. 医師:被害者は皆さんの声を必要としている。不処罰を糾弾する声をあげてほしい。また、マッピング報告書で報告された犯罪に適切な処罰を下したり、報告書が主張しているコンゴのための国際法定が実現されるよう、国連安全保障理事会に要請し、働きかけてほしい。

Q. 地下資源以外にも、貧困や民主主義の欠如など根本的な原因があるのではないか。
A. 医師:植民地期にゴムの搾取が行われた時代から、コンゴの資源が他国に搾取される構造は続いている。1945年にはウラン、そして今日ではコルタン。この搾取構造のために、女性を親や夫や子どもの前でレイプするという兵器としての性暴力が使用されている。紛争の根本原因は、個人やコミュニティのアイデンティティを破壊する経済システムである。

Q. 政治や経済の世界での女性の地位が低い日本が、格差の解消のためにすべきことは何か。
A. 医師:G7 のジェンダー平等諮問委員会の共同委員⻑を務めた際の勧告と重なるが、まずは、女性がより社会で責任を持てるような、斬新的な法を採択すること。もう一つは勇気を持って、差別的な法律を削除・撤廃していくこと。

医師は最後に改めて、沈黙を破る必要性を強調しました。「性暴力を告訴した女性は、沈黙を守れと言われ、二度屈辱を受ける。性暴力のない社会は、家父長制のデメリットも打破できる。男性も女性も平等のために一緒に闘いましょう」。性暴力を社会の中で可視化し声をあげていく重要性が共有された会となりました。