『AIアカデミックフォーラム2020』AIが活用できる人材育成とは何か-そのために必要な大学の変革と役割を考える
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日程:2020年01月28日(火)
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時間:13:00-18:10 (12:20受付開始)
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会場:六本木アカデミーヒルズ(東京都港区六本木6丁目10番1号 六本木ヒルズ森タワー49F)
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主催:
日本マイクロソフト株式会社
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共催:
東京大学未来ビジョン研究センター
一般社団法人AIデータ活用コンソーシアム -
対象者:
各大学のICT/AI活用による授業革新に興味のある先生や研究者の方
(学生の方は修士以上の方)
大学のブランド向上に関心のある経営企画部門
AIを活用した大学変革と人材育成に興味のある学長・理事
AI導入に興味のある情報システム部門の方
AIに関する政策・事業に携われている政府・公共機関に所属される方※大変申し訳ございませんが、対象参加者以外の方には参加をお断りしております。予めご了承ください。
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参加申込:
参加希望の方は、主催の日本マイクロソフト株式会社ウェブサイトからお申込みください。(募集人数200名を予定)
Society 5.0 時代に向け、学術界、産業界、公的機関、市民団体など様々な業界で始まっている変革の背景の一つにAIの活用がありますが、現在そのAIを活用できる人材の不足が課題となっています。社会への「人材」輩出は大学における重要なミッションの一つですが、大学卒業後、経済的・社会的ともに主体的な生活を獲得していけるような人材の育成は、ますます難しくなってきています。さらに、政府の掲げるAI戦略の実現に必要なAIエコシステムの確立も日本ではまだ道半ばであり、そのようなエコシステムを現場レベルで担っていく人材を育成するリカレント教育も大学に求められています。
一方で日本の大学は、少子高齢化による国内での学生獲得戦の激化に加え、海外では革新的な社会サービスまでを提供する大学や、運営形態を完全デジタル化した大学の出現などにより、学生獲得のハードルはさらに上がってきています。
このような状況下において、今後 日本の大学は、社会に対してどのような役割を果たし、どういった新しい価値を創造し訴求していけばよいのでしょうか。
本イベントでは、AIの様々な領域で、第一線で取り組まれている大学、研究所、政府関係者等の識者の方々と共に、大学内外でのAI活用ができる人材育成とは何か、また、そのために必要な大学の変革と役割について、政策や教育面も含めた考察を深めます。同時に、海外や日本の各大学で活用されている、マイクロソフトの取り組み、最新事例などもご紹介します。
東京大学未来ビジョン研究センター
技術ガバナンス研究ユニット事務局
ifi_tg★ifi.u-tokyo.ac.jp(★→@)
2020年1月28日(火)、六本木アカデミーヒルズにて『AIアカデミックフォーラム2020』AIが活用できる人材育成とは何か―そのために必要な大学の変革と役割を考える、が開催されました。
写真提供:日本マイクロソフト株式会社
Society 5.0 時代に向け、学術界、産業界、公的機関、市民団体など様々な業界で始まっている変革の背景の一つにAIの活用があります。しかし、現在、AIを活用できる人材の不足が課題となっています。社会への「人材」輩出は大学における重要なミッションの一つですが、大学卒業後、経済的・社会的ともに主体的な生活を獲得していける人材の育成は、ますます難しくなってきています。さらに、政府の掲げるAI戦略の実現に必要なAIエコシステムの確立も日本ではまだ道半ばであり、そのようなエコシステムを現場レベルで担っていく人材を育成するリカレント教育も大学に求められています。このような状況下において、今後 日本の大学は、社会に対してどのような役割を果たし、どういった新しい価値を創造し訴求していけばよいのでしょうか。
本イベントでは、大学内外でのAI活用ができる人材育成とは何か、また、そのために必要な大学の変革と役割について、AIの様々な領域において第一線で取り組まれている大学、研究所や企業、政府関係者等の識者の方々と共にディスカッションを行いました。
最初はマイクロソフト社のアレクサンドロス・パパスピリディス氏によるマイクロソフトが提供するAI研究や教育プログラムと「責任あるAI」のアプローチの話、東京大学の越塚登氏によるAIを使いこなせる人材の育成のために求められる大学の在り方や注力すべき技術分野の話、文部科学省の橋爪淳氏による日本政府が進めるAI研究開発政策の動向が話題提供されました。
続いてAIの最前線を学ぶ機会として、理化学研究所革新知能統合研究センター/東京大学の杉山将氏から機械学習の課題解決に向けた最先端のAI研究の概説とセンターの人材育成の試み、京都大学の西野恒氏からコンピュータビジョン分野によってより詳細に私たちの環境を理解できるようになる技術と大学のリカレント教育の活動が紹介されました。さらに日本マイクロソフト社の中井陽子氏は、マイクロソフトが社会課題解決などに対して展開しているプログラムや技術を紹介されました。
これらの基調講演を受けパパスピリディス氏、杉山氏と西野氏に加えて、株式会社NTTデータの木谷強氏、大阪大学の石黒浩氏、内閣官房から田丸健三郎氏を新たにパネリストとしてお迎えして、「AIの社会実装とAI人材の育成に向けて必要なこと-大学とAIエコシステム」と題するパネルディスカッションを東京大学の江間の司会で行いました。パネルでは大きく以下の3つのテーマを扱いました。
テーマ1 社会:人間中心社会とデータ駆動型社会~これから求められる社会像や人材像とは?
テーマ2 方法:社会構築と人材育成の場や工夫~大学や産業界の役割とは?
テーマ3 行動:課題と今後のアクション~今日からできることや連携の可能性とは?
写真提供:日本マイクロソフト株式会社
テーマ1の議論の前提として、内閣府が2019年に公開した「人間中心のAI社会原則」やG20の貿易デジタル経済大臣会合で言及された”Human-centered Future Society”があります。パネルディスカッションでは、現在のAIができることは効率化や最適化であるにすぎないものの、意思決定支援などがAIに行われることによって人々の行動や考えに大きく影響をもたらされるような近未来の社会像が展開されました。機械が社会を管理していてもそれをプライバシー侵害などとは思わず、快適であると思える環境を作る仕組みが必要であるのではという意見がある一方、プライバシーとは何かという考え方も時代や国によって異なるから、多様な人々の意見を聞きながらあるべき社会像を考えていくことが重要であるという意見もありました。AIによる効率化や最適化も、誰のベネフィットのためという視点によって、社会の分断を加速するツールともなりえます。そのため技術が進展する社会でこそ、哲学などを含む人文社会科学的な知識を身に着けた人材が益々求められるようになります。
そのような人材はどのようにして育成できるのでしょうか。テーマ2の方法論では、企業においては、プロダクトを社会に提供していくうえでは、公平性やプライバシー保護といった実践的な問いはクライアントやユーザとの対話から行われます。日々刻刻と進展する技術、またはディープフェイクなどの悪用や社会情勢の変化に対応するために、社内教育なども行われていますが、大学と連携することで獲得できる知があると議論が展開しました。
技術だけではなく社会や人を深く理解するための教養や批判的思考は10代や20代の若者だけではなく、今まさに第一線で働いている社会人にこそ求められます。テーマ3の人材育成のためにとれる具体的な行動として、社会人の学びなおしの機会を提供するリカレント教育が中心的に議論されました。超高齢社会に突入している日本では、40から50代こそが、即戦力として重要になります。日本の政策、産業界、大学の連携によって、新たな知識や多様性を獲得できる機会を増やしていくことが、これからのAI人材の育成に向けて必要です。一方で、それぞれの国にはそれぞれの制度や文化があります。海外をまねる、海外から学ぶだけではなく、日本の社会状況や企業/大学の文化に合わせた産学官民の連携のデザインやツールが重要です。
本イベントは13時から18時半近くという半日がかりのイベントではありましたが、200人を超える方にご参加いただきました。大きな関心を寄せられているテーマでもあり、人材育成に関する産学官の連携は今後も継続が求められることを実感する機会となりました。
文責:江間有沙(東京大学未来ビジョン研究センター)