第1回「コロナと未来」研究Webinarシリーズ

  • 日程:
    2020年06月24日(水)
  • 時間:
    13:00-14:30
  • 会場:
    ZOOMでのオンライン開催となります
    ご登録完了後、前日までに事務局より招待URLをお送りします
  • 言語:

    日本語

  • 定員:

    50名

  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター SDGs協創研究ユニット

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模での感染拡大により、我々の生活は大きな変容を求められており、これまでとは違った新たな社会のあり方やライフスタイルの構築が喫緊の課題になっています。すなわち、「Pre-Corona」の状態に単に戻すのではなく、今後しばらくはウイルスと共存しながら社会経済活動をしていく、「Intra-Corona」の生活が続くことになります。

この度、未来ビジョン研究センターでは現在と、その先の「Post-Corona」時代を見据え、より進化した持続可能な未来社会の姿について考えるため、様々な分野の専門家をお呼びする研究ウェビナーを企画いたしました。皆様のご参加をお待ち申し上げております。

プログラム
  • 講演1
    本多了 金沢大学理工研究域地球社会基盤学系准教授

    「下水のコロナから分かること」
    いま世界各国で新型コロナウイルス感染症の流行検知・予測を目的として、下水中のウイルスモニタリングを行う動きが加速している。講演では「下水疫学調査(wastewater-based epidemiology)」と呼ばれるこの手法のこれまでの知見と今後の可能性について紹介するとともに、ポストパンデミック社会における衛生観念の変化について展望する。

  • 講演2
    堀江宗正 東京大学大学院人文社会系研究科教授

    「コロナ後の宗教とスピリチュアリティ~感染爆発から個人化へ」
    日本では、COVID-19と宗教との関係は取り沙汰されていないが、諸外国では宗教的集会が感染爆発の引き金となっている。信教の自由や集会の自由や多文化主義などと公衆衛生の葛藤が論点となっている。それに対して、オンライン上で集会を開いたり、儀式をおこなう動きも出ている。このことは、宗教の個人化、個人的スピリチュアリティの台頭を招く。また、グローバルな苦境に対する諸宗教での一致した活動も出てきている。宗教と感染症の歴史から見たときに、以上のような動きはどのように理解することができるだろうか。人類の連帯感に寄与するような普遍的スピリチュアリティの胚胎を確認することができるように思われる。

  • コーディネーター
    福士謙介 東京大学未来ビジョン研究センター副センター長・教授
講演者

本多了(ほんだりょう)
金沢大学理工研究域地球社会基盤学系准教授。
1977年生まれ。金沢大学理工研究域地球社会基盤学系准教授。環境微生物学,廃水処理,環境リスクが専門。2005年、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了,博士(工学)。同年東大サステイナビリティ学連携研究機構特任助手/特任助教。2009年東大環境安全研究センター特任助教、JICA専門家としてタイに赴任。2012年より金沢大学。現在,日本水環境学会COVID-19タスクフォース幹事長として,新型コロナウイルスの下水疫学調査に関する研究に携わる。

堀江宗正(ほりえのりちか)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。
1969年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター教授。死生学、スピリチュアリティ研究。2000年、東京大学大学院人文社会系研究科宗教学宗教史学博士課程満期退学。博士(文学)。著書に『ポップ・スピリチュアリティ――メディア化された宗教性』、『歴史のなかの宗教心理学――その思想形成と布置』、『スピリチュアリティのゆくえ』、編著に『現代日本の宗教事情』(シリーズいま宗教に向きあう1。以上、岩波書店)、『宗教と社会の戦後史』(東京大学出版会)。

この度、未来ビジョン研究センターは、現在とその先の「Post-Corona」時代を見据え、より進化した持続可能な未来社会の姿について考えるため、様々な分野の専門家をお呼びして議論する、「コロナと未来」研究Webinarシリーズを開始いたしました。2020年6月24日(水)に、その第1回として、金沢大学理工研究域地球社会基盤学系准教授の本多了氏と東京大学大学院人文社会系研究科教授の堀江宗正氏をお招きし、約80名の参加を得て開催いたしました。

はじめに、本多氏より、「下水のコロナから分かること」と題し、いま世界各国で急速に広まっている、新型コロナウイルス感染症の流行検知・予測を目的とした「下水疫学調査(wastewater-based epidemiology)」について、国内外の事例とともにご解説いただきました。これまでの知見ととともに、今後の可能性として、新型コロナウイルスは医療機関で捕捉できない無症状・軽症の患者の便からも排出されることから、地域単位の流行状況や施設単位のクラスターを把握することができ、感染拡大対策に活用できるのではないかとの展望が示されました。

次に、堀江氏より、「コロナ後の宗教とスピリチュアリティ~感染爆発から個人化へ」と題し、新型コロナウイルスと宗教やスピリチュアリティとの関係性について、歴史的視点も交えてお話しいただきました。諸外国では宗教的集会が感染爆発の引き金となっており、それに対して、オンライン上で集会や儀式をおこなう動きや、グローバルな苦境に対する諸宗教での一致した活動も出てきているものの、宗教に限定せず⼈々の「信じやすい⼼」に⽬を向けると、陰謀論、差別感情、被害者断罪が見られると指摘されました。一方で、今後は人類の連帯感に寄与するような普遍的スピリチュアリティが存在感を増すという、ポジティブな議論もご紹介いただきました。

その後の質疑応答では、本多氏には下水疫学調査における新型コロナウイルスの検出方法や検査の所要時間など、堀江氏にはパンデミック下での人々の精神的ストレスに対する宗教従事者の貢献などについて質問が出されたほか、両氏による議論も行われました。

(文・写真:未来ビジョン研究センター 武藤淳)