第5回「コロナと未来」研究Webinarシリーズ

  • 日程:
    2020年10月14日(水)
  • 時間:
    16:30-18:00
  • 会場:
    ZOOMでのオンライン開催となります
    ご登録完了後、2020年10月13日(火)午後に事務局より招待URLをお送りします。
  • 言語:

    日本語

  • 定員:

    50名

  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター SDGs協創研究ユニット

  • 対象者:

    どなたでもご参加いただけます(東大外、学生の参加も歓迎)。
    但し、一般向けシンポジウムではなく、研究ウェビナーである点、ご了承ください。

  • 申込締切:

    2020年10月13日(火)12:00まで
    定員に達し次第、受付を終了いたします。予めご了承ください。

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模での感染拡大により、我々の生活は大きな変容を求められており、これまでとは違った新たな社会のあり方やライフスタイルの構築が喫緊の課題になっています。すなわち、「Pre-Corona」の状態に単に戻すのではなく、今後しばらくはウイルスと共存しながら社会経済活動をしていく、「Intra-Corona」の生活が続くことになります。

この度、未来ビジョン研究センターでは現在と、その先の「Post-Corona」時代を見据え、より進化した持続可能な未来社会の姿について考えるため、様々な分野の専門家をお呼びする研究ウェビナーを企画いたしました。皆様のご参加をお待ち申し上げております。

プログラム
  • 講演1
    橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科 教授)

    「social stress testとしてのコロナ」

    未曾有の医療問題と思われているこの感染症だが、起こっている問題のほとんどは古くから存在していた社会構造的問題が新型コロナ感染症をきっかけに再表出したにすぎない。実際コロナ「災害」ではなくコロナ「禍」と言われているのも、人為的な要素、特に社会や制度が抱えている弱点や矛盾が状況を作り上げているという認識があればこそだろう。一方で、人為の及ぶものであるからこそ、強みや変革の可能性なども増幅されている。保健所で起こっていた問題を中心に、ガバナンス・アカウンタビリティの欠如、人的資源よりも箱物に頼る風潮と「情報システム」の誤謬などを取り上げつつ、住民と政府との間に挟まり、システム の限界に振り回されつつも、住民とのコミュニケーションを構築しながら「covid19」という現実への対応を模索している保健師たちの世界にも触れたいと思う。

  • 講演2
    広井 良典(京都大学こころの未来研究センター 教授)

    「ポスト・コロナの社会構想――分散型システムへの移行と「生命」の時代」

    新型コロナ・パンデミックが大きく社会のありようを変えたことは確かだが、コロナをめぐる動きは孤立した現象ではなく、グローバリゼーションや気候変動など、経済社会の構造変化と不可分の関係にある。こうした関心を踏まえ、また私たちの研究グループが2017年に公表した、AIを活用した持続可能な日本の未来に関するシミュレーションの内容も踏まえながら、1)分散型システムへの移行、2)格差の是正と持続可能な福祉社会、3)ポスト・グローバル化の展望、4)情報と生命といった話題にそくして、ポスト・コロナの社会像を幅広い視点から考えてみたい。

  • コーディネーター
    高村 ゆかり(東京大学未来ビジョン研究センター 教授)
講演者

橋本 英樹 (東京大学大学院医学系研究科 教授)

1988年医学部医学科卒、大学病院・市中病院の内科研修・勤務を経て1999年帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講師。2004年東京大学医学部附属病院21世紀医療センター特任教授を経て2007年より医学系研究科公共健康医学専攻教授。

広井 良典(京都大学こころの未来研究センター 教授)

1961年岡山市生まれ。東京大学教養学部卒業(科学史・科学哲学専攻)、同大学院修士課程修了後、厚生省勤務、千葉大学法政経学部教授をへて2016年より現職。この間、2001-02年マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。専攻は公共政策及び科学哲学。『日本の社会保障』(岩波新書、1999年)でエコノミスト賞、『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、2009年)で大仏次郎論壇賞受賞。他の著書に『ポスト資本主義』(岩波新書)、『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社)など多数。国土審議会・国土の長期展望専門委員会委員、内閣府・選択する未来2.0懇談会委員等の公職を務める。

未来ビジョン研究センターでは、現在とその先の「Post-Corona」時代を見据え、より進化した持続可能な未来社会の姿について考えるため、様々な分野の専門家をお呼びして議論する、「コロナと未来」Webinarシリーズを開催しております。2020年10月14日(水)に、その第5回として、東京大学大学院医学系研究科教授の橋本英樹氏と京都大学こころの未来研究センター教授の広井良典氏をお招きし、30名強の参加を得て開催いたしました。

はじめに、橋本氏より、「social stress testとしてのコロナ」と題してご講演いただきました。「コロナ禍」は人為的な要素、特に社会や制度が抱えている弱点や矛盾が再表出したものであるとの認識から、これまでの政府や自治体の対応について、現場の保健師の視点も交えてご解説いただくとともに、専門家が一般の方々から信用を得ることの難しさについてもお話しくださいました。「健康」や「医学」に関する問題の背景には、人の心理・行動・判断、人と人・人と社会のかかわり方、その文化・歴史が存在し、課題の多くは変化する状況に応じて、社会システムのどこに対応不全の原因があるのかを診断することが必要との認識を述べられました。

次に、広井氏より、「ポスト・コロナの社会構想―分散型システムへの移行と「生命」の時代」と題してお話をいただきました。コロナをめぐる動きは孤立した現象ではなく、経済社会全体の構造と不可分の関係にあり、日本においては人口減少社会への移行という変化とも関係しているとの視点に立ち、コロナ後の社会構想として、①「分散型システム」への移行、②格差の是正と「持続可能な福祉社会」のビジョン、③「ポスト・グローバル化」の世界の構想、④「情報」から「生命」へ、という4つの論点から分析してくださいました。いずれの論点についても、「ローカライゼーション」に結びつく点で共通しており、今後「ローカル」を出発点として様々な課題に取り組んでいくことの重要性が示されました。

その後の質疑応答では、まず講演者お二方の間で、集中と分散、貧困や格差と感染拡大の関連性などについて議論されたのち、橋本氏、広井氏それぞれに対する参加者からのご質問に各氏が回答されました。本ウェビナーには海外からもご参加いただいており、今回はジャカルタの方からのご質問も頂戴し、よりグローバルな視点での議論が闊達に行われました。

(文・写真:未来ビジョン研究センター 武藤淳)