第7回「コロナと未来」研究Webinarシリーズ

  • 日程:
    2020年11月30日(月)
  • 時間:
    15:15-16:45
  • 会場:
    ZOOMでのオンライン開催となります
    ご登録完了後、2020年11月27日(金)午後に事務局より招待URLをお送りします。
  • 言語:

    日本語

  • 定員:

    50名

  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター SDGs協創研究ユニット

  • 対象者:

    どなたでもご参加いただけます(東大外、学生の参加も歓迎)。
    但し、一般向けシンポジウムではなく、研究ウェビナーである点、ご了承ください。

  • 申込締切:

    2020年11月27日(金)12:00まで
    定員に達し次第、受付を終了いたします。予めご了承ください。

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界規模での感染拡大により、我々の生活は大きな変容を求められており、これまでとは違った新たな社会のあり方やライフスタイルの構築が喫緊の課題になっています。すなわち、「Pre-Corona」の状態に単に戻すのではなく、今後しばらくはウイルスと共存しながら社会経済活動をしていく、「Intra-Corona」の生活が続くことになります。

この度、未来ビジョン研究センターでは現在と、その先の「Post-Corona」時代を見据え、より進化した持続可能な未来社会の姿について考えるため、様々な分野の専門家をお呼びする研究ウェビナーを企画いたしました。皆様のご参加をお待ち申し上げております。

プログラム
  • 講演1
    森山信三 (カトリック中央協議会 神父)

    「ローマ教皇フランシスコ『パンデミック後の選択』をめぐって」

    昨年11月、教皇フランシスコは、「すべてのいのちを守るため」というテーマで来日されました。それから数カ月後には、パンデミックが宣言されました。表題の書物は、イタリアで感染者が爆発的に増え続けていた頃の教皇のメッセージ集です。その中で教皇は言います。
    「今回の危機が、私たちが自分の生活を自分の手に取り戻し、眠っている良心を呼び覚まし、拝金主義をやめて、人間のいのちと尊厳を中心にする人間的、環境的回心をする機会となることを願います。私たちの文明は、激しい競争と極端な個人主義で、目まぐるしい生産と消費にあふれ、その法外なぜいたく品や莫大な利益はごくわずかな人にしかまわりません。この文明は見直してダウンシフトし、新たにされなければなりません。」(48ページ)
    教皇の言葉を手がかりにしながら、私たちは、この世界的危機をどのようにとらえ、また乗り越えていくべきなのか、皆さまとともに考えていきたいと思います。

  • 講演2
    中澤栄輔(東京大学大学院医学系研究科 講師)

    「After/with COVID-19の公衆衛生倫理」

    COVID-19の発生からもうすぐ1年が経とうとしている。この1年間、我々の社会はCOVID-19に振り回され、対処に追われ、その結果として社会にはひずみが生じた。たしかに、COVID-19に関する感染症学的理解は進んだ。それに応じて社会は平静を取り戻しつつある。その一方で、COVID-19を人文社会的観点から捉えると、いまだ社会の疵の深さに唖然とする。 このウェビナーでは、そうした人文社会的観点によるCOVID-19理解のひとつとして、公衆衛生倫理の観点を紹介したい。具体的には、ワクチンや人工呼吸器の分配に関する倫理を軸に、社会格差、共同体、人権について考えてみたい。

  • コーディネーター
    福士謙介 (東京大学未来ビジョン研究センター 副センター長)
講演者

森山信三  (カトリック中央協議会 神父)

福岡県生まれ。1981年に福岡大学商学部卒業、1988年に福岡カトリック神学院卒業、司祭叙階。その後、福岡県内各地の教会の主任司祭、およびカトリック幼稚園園長を歴任。2020年4月よりカトリック中央協議会出版部。

中澤栄輔 (東京大学大学院医学系研究科 講師)

1975年長野県佐久市生まれ。日本大学文理学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科(科学史・科学哲学)修了。2012年東京大学大学院医学系研究科医療倫理学分野特任助教などを経て、2017年より現職。論文にNakazawa E, Ino H, Akabayashi A. 2020. Chronology of COVID-19 cases on the Diamond Princess cruise ship and ethical considerations: a report from Japan. Disaster medicine and public health preparedness 2020 Mar 24:1-27. など。

未来ビジョン研究センターでは、現在とその先の「Post-Corona」時代を見据え、より進化した持続可能な未来社会の姿について考えるため、様々な分野の専門家をお呼びして議論する、「コロナと未来」Webinarシリーズを開催しております。2020年11月30日(月)に、その第7回として、カトリック中央協議会神父の森山信三氏と東京大学大学院医学系研究科講師の中澤栄輔氏をお招きして開催いたしました。

はじめに、森山氏より、「ローマ教皇フランシスコ『パンデミック後の選択』をめぐって」と題し、イタリアで新型コロナウイルス感染者が爆発的に増え続けていた頃の教皇のメッセージ集を手がかりにしながら、我々がこの世界的危機をどのようにとらえ、また乗り越えていくべきなのか、という観点からご講演いただきました。「無関心のグローバリゼーション」という言葉をよく使われる教皇は、自分さえよければいいという「ウイルス」が蔓延してしまっていると指摘されており、パンデミックが突き付けた格差という問題に対し、社会の犠牲者の側に立って、その視点から物事を考えていこうとする、「貧しい人のための優先的選択」という試みが求められているとのお話を頂戴しました。

次に、中澤氏より、「After/with COVID-19の公衆衛生倫理」と題し、人文社会的観点によるCOVID-19の理解のひとつとして、公衆衛生倫理の観点からご講演いただきました。具体的には、ワクチンや人工呼吸器の分配に関する倫理を軸に、社会格差、共同体、人権について検討し、この1年間、感染症学的理解は進んだ一方で、我々の社会はCOVID-19の対処に追われ、その結果として社会にはひずみが生じたことを指摘されました。その上で、ワクチン等の貴重な医療資源の配分に際しては、正義の原則に従い、不幸な境遇に置かれた人に対する配慮がなされ、国際的に、国内的に、フェアな分配がなされなければならないと述べられました。

その後の質疑応答では、森山氏、中澤氏それぞれに対して参加者から様々な観点からご質問が寄せられ、「公平性」や「功利主義」、「自己犠牲」といった概念について言及されたほか、講演者お二方の間で、宗教において培った知見を政府などに提言していくことの必要性や、「ケア」や「寄り添う」といった、今の社会において非常に重要な価値を宗教から学ぶことができるのではないかといった議論が交わされました。

(文・写真:未来ビジョン研究センター 武藤淳)