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No.12
技術ガバナンス研究ユニット
GPAI仕事の未来:日本調査からの報告と提案
No.12
技術ガバナンス研究ユニット
人工知能(AI)が浸透する社会において、働く人たちにとって良い未来を築くためには、何が必要だろうか。AIが仕事にどのように影響をしているのか、現場では何が起きているのか。このような問題意識に基づいて行われたGlobal Partnership on AI (GPAI)の試みと調査を報告します。
GPAIとは人間中心の考え方に立ち、透明性や人権の尊重などの原則に基づいた「責任ある AI」の開発・利用の実現を目指す国際的な枠組みです。いくつかある分科会のうち、「仕事の未来(Future of Work)」分科会の日本チームが本報告書を執筆しました。
本調査の先行調査として、海外ではすでにインタビュー調査が行われています。先行調査や本調査でも、学生が主体となって働く現場へのAI利活用の目的や課題をインタビューする方法論をGPAIでは採用しています。AI導入など産業界の変化が著しい中、技術変化やその利活用に敏感である学生が調査対象や質問項目を選定することが、仕事の「未来」を考えるうえでも示唆に富むものとなるとの考えからです。
またAIを仕事で利活用するためには、調査対象である国・地域の産業構造や社会課題を把握する必要があります。日本では少子高齢化社会における労働力不足がAI導入の動機の一つとなっているほか、生産性や多様性、サービス品質の向上も期待されています。このようにAIの職場での利活用が進む一方、IT人材の不足やデータ管理の課題、AIがもたらす公平性や説明可能性の問題や労働環境への影響も懸念されているのが日本の現状です。
先行調査を参考としつつも日本の状況に合わせた調査体制や調査項目を構築する必要があったため、本調査は短期間での試験的な調査となりました。結果として11件(金融3件、行政2件、インフラ&建設2件、翻訳1件、通信&放送1件、介護2件)の企業や自治体の担当者にインタビュー調査を行いました。
調査結果から、AI利活用の目的は人材不足への対応やサービス品質の向上、環境や産業変化への適応に類型化されました。また各産業分野では技術開発のみならず、ビジネス課題の分析、ガバナンス体制の構築、情報公開や人材育成等様々な取り組みが実践されていました。一方、AI利活用の課題としては、透明性や公平性などAI技術そのものの技術課題のみならず、AIと人間の役割分担の再定義などAIと人間の信頼構築に関する課題や、AIへの過度な依存といったAIを利用する人間側の課題、さらには法制度や商習慣、文化等社会環境に関わる課題が論点として浮かび上がりました。
本調査から得られた知見をもとに、最後にGPAI加盟国やGPAI委員に下記2点を提案します。
1.「仕事の未来」調査に関する国・地域別の報告書の必要性
2.学生を中心として調査する方法論の推進と効果検証
GPAIは国内外のボランタリーな活動に支えられています。本報告書が、今までとこれからGPAI活動にご協力いただく日本の企業・組織や学生にとってGPAIの活動に対する理解促進の資料となること、さらに海外でこれから事例調査を行うGPAIの専門委員が日本のAIと働き方をめぐる背景や調査の方法や結果を知ることで、今後の調査の参考となることを期待します。
本レポートは、Global Partnership on AI、東京大学未来ビジョン研究センター技術ガバナンス研究ユニット、同志社大学働き方と科学技術研究センターの研究成果です。全文は以下よりダウンロードいただけます。
また、本レポートはGlobal Partnership on AIのFuture of Work(仕事の未来)日本チームによって執筆されたものである。本レポートにおける提案は、日本チームからによるものであり、GPAIやOECD、日本の総務省や経済産業省、インタビュー対象であった企業や自治体など関連機関の意見を代表するものではありません。