• 社会提言

    No.1

    地域システム設計研究ユニット

地域循環共生圏を軸とした社会変革へ向けて
産業と再生可能エネルギー

本社会提言は、以下の3つの提言を行う。

本社会提言は、以下の3つの提言を行う。

1)再生可能エネルギーの導入は地域の産業やその産業から製造される製品の価値を高める


地域の伝統・文化や地理的条件と関連づいた産業は、カーボンニュートラルの達成後もその地域において中心となりうるものであり、持続可能性が高いといえる。このとき、地域の住民や関連するステークホルダーにとって遺すべきものとして、その地域の人々の感性や物事の筋、物語としての受け入れやすさ、価値観など、情理にあうかどうかを、継続的な「対話」により明らかにするプラットフォームが必要である。地域の社会経済にとっては、化石資源等域外品の購入により流出していた財を地域の中で循環させられるよう、産業構造を可視化させながら対話を行う必要がある。ここで、若手世代が既にSDGs等を前提した価値観を持ちつつあることを想定し、再生可能資源の付加価値の定義と可視化を行うべきである。

2)再生可能エネルギーの地域における社会実装は、地域の公共団体による支援を前提に、成功例を重ねる形で導入されるべきである


廃校を活用して酒蔵として再生し、さらに、里山循環型産業として原料やエネルギーからの環境負荷も低減させようとする日本酒製造の事例にもあるが、地域が一丸となって再生可能エネルギーを活用する産業を支えていくことが有効である。とくに、エネルギー事業そのものを考えた場合、その公共性の強さから、市場経済だけにそのコントロールを委ねるべきではない。制度的なものに加え、エネルギーの見える化や市民理解のための教育システムの構築、関係する地域のエコシステムやインフラストラクチャーとの調整などが必要であり、自治体だけに限らず農業協同組合や森林組合、教育機関といった、公共団体の関与が不可欠である。

3)地域のエネルギー転換を行うためには、カーボンニュートラルだけではなく多面的な価値を勘案すべきである


再生可能エネルギーの導入は、エネルギーの転換だけでなく、地域の産業やくらし方へも影響を与えうる。地域においてはSDGsの推進や住民の幸福増進等の社会の根幹にかかわる事項が主の課題となりうるが、自然災害や感染症、そして、戦争のような外的攪乱要因に対して脆弱であるので、これらを解決・緩和できるような基盤が必要であり、再生可能エネルギーの導入をその強化につなげるべきである。このような観点から再生可能エネルギーの導入を促進することは、結果的に地域に多面的な価値を生み出す事となり、最終的には地域の魅力に繋がり、人口減少に歯止めをかけたり移住者を増やしたりする事になる。

この社会提言は、東京大学未来ビジョン研究センター地域システム設計研究ユニットの研究成果の一つです。全文は以下よりダウンロードいただけます。