• 政策提言

    No.20

    データガバナンス研究ユニット

スマートシティデータガバナンス ガイドライン
―スマートシティ実装におけるデータ利活⽤の考え ⽅―

1. 政策提言の背景

未来ビジョン研究センターデータガバナンス研究ユニットではSociety5.0の目指す社会を実現するため、個人情報を含むデータのルールを提案していくことを目指して2020年に設置されました。その後、ヘルスケアデータのガバナンスの方法などについて、学際的なアプローチで研究してきました。2021年以降は、日立東大ラボのハビタットプロジェクトに参加し、AIとデータについて、アジャイルガバナンスの適用可能性の検討を始めました。2022年度は、具体的な応用として、スマートシティのデータガバナンスガイドラインの策定に取り組みました。ガイドラインの策定に当たっては日立東大ラボにおけるスマートシティの柏の葉スマートシティの取り組みについて詳しくヒアリングを行い、このような事例を参考に、ガイドライン素案を作成しました。

このガイドラインについては、2023年3月20日に実施された公開ワークショップ「スマートシティとデータガバナンス:ポリシーとガイドライン」での専門家の議論を経て、最終版のガイドラインを発表させていただいたものです。

2. 提言するガイドラインの概要

スマートシティは、IoTやAIなどの新技術を活用することで、都市や地域の様々な課題を解決できる持続可能な都市・地域のことを指します。一方で、データの先行活用による市民の意識との乖離により、スマートシティへの取り組みが停滞するケースも見受けられます。テクノロジーの進化によってスマートシティの可能性が広がっていることは間違いありませんが、テクノロジーありきで進めることや、テクノロジーを先に活用するためにデータを収集することは、市民や社会から反発を受ける可能性があります。

そこで、スマートシティ推進におけるデータガバナンスの考え方を示すため、「スマートシティデータガバナンスガイドライン」(以下、本ガイドライン)を取りまとめました。本ガイドラインの目的は、テクノロジーやデータの活用を優先するのではなく、スマートシティにおけるあるべき姿(人間中心)の価値創造を可能にすることにあります。データガバナンスとは、スマートシティにおけるデータの取り扱いに関するルールを定め、それに基づき、適切なデータの利用をコントロールする枠組みのことです。データガバナンスには、市民や社会との間に誤解を生じさせないためのプロセスも含まれ、適切なスマートシティの運営に寄与します。

本ガイドラインでは、人間(市民)を中心に考え、その権利の保護とサービス(利益)の創出を両立させるために、スマートシティにおけるデータの取り扱いを適切にガバナンスするための手順等を説明したものです。多くのスマートシティ関係者に、データガバナンスを考えるうえでの参考にしていただければと思います。

この政策提言は、東京大学未来ビジョン研究センター データガバナンス研究ユニットの研究成果の一つです。全文は以下よりダウンロードいただけます。