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No.22
ライフスタイルデザイン研究ユニット
産学公⺠の連携に基づく健康・ウェルネス増進の施策と提⾔東京都多摩地区における実践事例をもとに
No.22
ライフスタイルデザイン研究ユニット
要約
日本は健康長寿社会を形成しつつあるが、社会的な健康や個々人の幸福も含めたウェルネスを生涯に亘り実現することは必ずしも容易ではない。人生の早い段階からウェルネスを意識し、望ましい生き方を発見し実践することの意義は極めて大であるが、一方で、これまで培ってきた生活習慣やライフスタイルを特定の目的のもとに変更し、弛まず改善していくことは、多くの人々にとって困難である。図らずも、新型コロナウイルス感染症のパンデミック下において、人々はこの課題に直面することとなった。
市民の健康・ウェルネス増進にとって、市区町村自治体は公的セクターにおけるその直接の担い手である。そこで本研究では、これら自治体の役割と責任及び今後の在り方について、事例研究をもとに深耕した。その上で、イノベーティブな製品・サービスやソーシャルイノベーションの実践における課題を公共政策の視座から議論し、政策提言を行った。
事例研究は、東京都多摩地区における以下の2 つの事例を採用した。多摩地区の市町村部は、国内そして都内においても高齢化率や独居老人の割合が押しなべて高く、これらの諸課題に対する対応、同時に子育て支援のさらなる充実が求められている。
- ヘルスケア領域におけるインパクト評価と品質確保のメカニズム研究プロジェクト:東京都八王子市における大腸がん検診の事例(第2章)
- リビングラボを用いたライフスタイル変容研究プロジェクト:東京都東大和市ライフスタイルラボの事例(第3章)
加えて、各事例における当事者・関係者の見解、拡大的に展開していくための社会システムの在り方に関する有識者による検討を踏まえ、以下の4 点を提言した。
- 提言1. 適切な課題の設定のための組織体制の整備:産学公民のステークホルダーを交えた協議機会を平素より設置・運営
- 提言2. プラクティスと「小さな成功」の蓄積:自治体の担当者や関係者が意欲的かつ継続的に従事することができる環境の整備、風土・文化の醸成のための施策の実施
- 提言3. 発展的な展開の道筋づくり:自治体における成果連動型民間委託契約方式の積極的な導入、産学公民のイコール・パートナーシップの下での分業体制の確立、地域活動に根差したソーシャルキャピタルの形成に向けた努力
- 提言4. ベストプラクティスの拡大展開:関連府省庁によるベストプラクティスの蒐集と拡大展開のための助成・支援、都道府県自治体レベルでの積極的な実践、その前提となるベストプラクティスの作りこみと汎用性の確保
この政策提言は、東京大学未来ビジョン研究センターライフスタイルデザイン研究ユニットの研究成果の一つです。全文は以下よりダウンロードいただけます。