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梶川 裕矢 未来ビジョン研究センター教授
ロン イン 大学院工学系研究科准教授
吉田 好邦 大学院工学系研究科教授
気候の高温化が生鮮食品供給と健康リスクに与える不均一な影響について-気候弱者に対する健康リスク軽減へ-
梶川 裕矢 未来ビジョン研究センター教授 ロン イン 大学院工学系研究科准教授 吉田 好邦 大学院工学系研究科教授
発表のポイント
- さまざまな気候変動リスクの中で、生鮮食品供給リスク、特に食品腐敗や食中毒病原菌由来のリスクについては、これまで検討が不十分であったことを確認しました。
- 生鮮食品供給リスクは、高齢者や小さな子供、低所得層に与える影響が高く、コールドチェーンの確保が重要であることを指摘しました。
- 安定的・安全なコールドチェーンシステムの確立に取り組むことで、気候変動に対し脆弱な集団への影響軽減に役立つことが期待されます。
高温化による健康影響のさまざまな経路
概要
東京大学未来ビジョン研究センターの梶川 裕矢教授、大学院工学系研究科のロン イン准教授と吉田 好邦教授らは、高温が食品供給チェーンと健康リスクに及ぼす不均一かつ広範囲な影響を明らかにしました。気候変動による極端な温度変化は今後、食品の腐敗を加速し、食中毒リスクを増大させる可能性があります。
本研究では、食品安全管理データを用いたコールドチェーン(注1)技術の重要性に着目し、生鮮食品供給が有する脆弱性と冷蔵物流における問題に焦点を当て、高温化による健康リスクへの影響を詳細に議論しました。この研究成果は、気候変動下における安全で健康的な食品供給の強化、特に、低所得層や高齢者などの脆弱な集団の健康リスク軽減に大きく貢献することが期待されます。
本研究成果は、2024年10月23日 (英国夏時間) に英国科学誌「Nature Climate Change」に掲載されました。
(注1) コールドチェーン:コールドチェーンとは、食品や医薬品などの温度管理が必要な製品を、製造から消費者に届くまでの間、一定の低温で保つための物流システムを指します。これにより、品質保持や安全性の確保が可能となり、特に鮮度が求められる生鮮食品やワクチンなどの輸送において重要な役割を果たします。
[発表者・研究者情報]
東京大学未来ビジョン研究センター
梶川 裕矢 教授
東京大学大学院工学系研究科
ロン イン 准教授
吉田 好邦 教授
[論文情報]
雑誌名: Nature Climate Change
題名: Extreme heat disproportionately exacerbates health issues by threatening fresh food supply
著者名: Yin Long*, Yoshikuni Yoshida, Yuya Kajikawa
DOI: 10.1038/s41558-024-02172-2
URL: https://www.nature.com/articles/s41558-024-02172-2