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No.6
次世代スカイシステム研究ユニット
航空分野のCO2削減に向けた⽔素利⽤に関する提⾔⽇本社会への提案
No.6
次世代スカイシステム研究ユニット
要約
国際航空分野では、ICAOが2050年までにカーボンニュートラルを達成する長期目標を掲げている。その達成には運航改善、機体設計変更、持続可能な航空機燃料(SAF)導入、カーボンオフセット利用など、多角的な手段が必要とされ、2024年から段階的に進められている。その中で、水素技術は脱炭素化の鍵となる長期的技術として注目されているが、実現には製造から供給までのサプライチェーン構築やインフラ整備はもちろんのこと、安全確保の制度構築、そして社会受容性の向上が求められる。
本提言では、未来の航空分野が、環境負荷を大幅に低減し、社会全体に利益をもたらす持続可能な形へと進化するために、日本社会として航空分野における水素利用に貢献するため、次の6つの要件を提示する:
(1)航空分野でのCO2削減における水素利用の重要性を認識する;
2050年までのカーボンニュートラル達成という航空分野での目標を実現するために、航空分野での水素利用は長期的なソリューションの1つとして重要視され、国内外にて関連技術の開発がスタートしている。この状況を日本社会として認識を広め、製造業のみならず、空港事業、運航/運送事業、水素関連事業においても総合的に航空分野での水素利用の重要性を認識する必要がある。
(2)小規模からの水素利用を優先的に進める;
航空分野で水素利用を進める上では、技術面、経済面はもちろんのこと、安全確保のための制度構築と社会受容性の課題が重要である。小規模な利用から開発を進めることで、安全性と制約の調整、社会受容性の向上を推進することが可能である。特に、地域空港をつなぐリージョナル機での水素活用を1つの有力なケースとして、空港での環境整備や、機体開発の対象としての検討を進めることが重要である。
(3)空港の水素利用を地域社会の水素ハブとして発展させる;
日本ではほとんどの水素が海外からの輸入に依存し、また航空分野だけでは水素の需要量が少なく採算が取れない可能性があるため、地域社会全体での水素利用を包括的に検討した上での、水素サプライチェーンの構築が必要である。その際に、その地域での他分野での水素利用を繋げる水素ハブとしての可能性の検討を早期に行い、空港を地域社会の水素ハブとして発展させることが必要である。
(4)グリーン水素確保の重要性を再認識する;
水素航空機の環境負荷低減を最大化するためには、水素生成時のCO2排出を抑えるグリーン水素の確保が必須である。グリーン水素は自然再生エネルギーを利用して製造されるが、インフラ整備の課題、製造コスト削減の必要性、CO2価格政策の必要性などの政策的、技術的課題が存在する。航空分野における持続可能な水素利用の基盤を築くためにも、改めて、日本におけるグリーン水素導入を促進するための検討が必要である。
(5)他産業での水素利用の優位性を航空分野に応用する;
航空分野での水素利用という技術革新は、日本では宇宙産業や自動車産業において高い水素関連技術を保有している。このため、技術的リーダーシップを確立し、国際市場における競争優位の獲得が期待される。他産業との技術連携を深め、システムインテグレーションと国際的な標準化活動を進めるために、体制づくりと、該当分野での理解が重要である。
(6)航空分野で水素利用を推進するためのグローバル人材を育成する;
水素航空機の開発と導入を実現するためには、技術開発だけでなく、国際的な基準策定や認証活動に携わる人材の育成が急務である。多国間プロジェクトへの参画を通じて、国際認証基準への理解と応用力を高め、大学・研究機関と産業界、官界が連携し次世代の人材を各分野で育成することで、航空分野でのカーボンニュートラル達成が可能となる。
上記の6つの要件を実現するために、日本の先進的な水素技術を結集して、水素リージョナル航空機を国際的な連携により開発し、水素サプライチェーンが構築できる地域での水素リージョナル航空ネットワークを構築し、こうした機体開発、インフラ整備、運航ネットワーク構築を連携して実施することを提言する。
こうした早期の社会実装に挑戦することにより、水素利用における安全基準則策定とその適合性証明方法開発を、国際機関ならびに国際標準化団体の活動を通してリードできる人材を産学官において養成することが可能となり、未来の航空分野が、環境負荷を大幅に低減し、社会全体に利益をもたらす持続可能な形へと進化することに日本社会が貢献できる。
この社会提言は、東京大学未来ビジョン研究センター次世代スカイシステム研究ユニットの研究成果の一つです。全文は以下よりダウンロードいただけます。