• 論文

    飯島勝矢 未来ビジョン研究センター教授

飯島勝矢教授らの研究論文がGeriatr Gerontol Int に掲載されました

タイトル:


Reconstruction of a resilient and secure community and medical care system in the coronavirus era – English translation of the Japanese opinion released from the Science Council of Japan.

共同研究者:


Katsuya Iijima, Masahiro Akishita, Tamao Endo, Tetsuo Ichikawa, Norio Ozaki, Kouetsu Ogasawara, Yasuki Kihara, Masafumi Kuzuya, Hiroko Komatsu, Hiroko Terasaki, Yuichiro Doki, Haruko Noguchi, Kiyoko Nishi, Yumi Nishimura, Nobuhiko Haga, Motohiko Miyachi, Seiji Yasumura, Junko Wake, Hidenori Arai.

ジャーナル:


Geriatr Gerontol Int 2025 DOI: https://doi.org/10.1111/ggi.15073
DOI: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/ggi.15073

見解の概要:


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の高齢者の高い重症化及び死亡リスクが注目され、この期間は、流行前から存在していた地域課題や社会課題(地域医療も含めた医療全般における課題も含む)を一気に顕在化させたといっても過言ではありません。また、もう一つ忘れてはならないのが、高齢者への自粛生活長期化による生活不活発や人との交流の断絶等を基盤とする健康二次被害、いわゆる「コロナフレイル」です。COVID-19が5類感染症になったとはいえ軽視することは出来ません。その上で、ウィズコロナ/ポストコロナ社会を見据え、快活な住民活動が再開される地域社会、多角的な視点においてレジリエントな地域社会、さらには国民に安心感を与えることの出来る医療・ケア体制などを改めて再構築しながら地域づくりにつなげていく必要があります。

COVID-19によるパンデミックを経験し、単に個の健康という視点だけではなく、医療界における体制の在り方、さらには地域社会や環境の在り方という広い視野から高齢化する日本社会の将来ビジョンを今回見解としてまとめました。本見解が、日本老年学会などの学協会、厚生労働省、文部科学省、経済産業省、国土交通省、内閣府、各種職能団体等の施策(省庁横断的な流れも含む)に反映されることを期待します。

(1)他の新興感染症や災害等の有事にも迅速に対応できる医療・ケア体制を再構築すべきである。
COVID-19のみならず、他の新興感染症や災害等の有事にも共通して生じうる課題として、最も脆弱な高齢者層を想定した医療・ケア体制の整備が必要である。

(2)有事の際にも十分に尊重されるエンドオブライフ(EOL)ケアおよびAdvance care planning(ACP:人生会議)を加速するべきである。
有事の際にも一人ひとりの高齢者が最期まで本人らしく生きることができるよう、早期からACPを実施することにより、本人の価値観・意向・人生の目標などを家族や医療・ケア従事者と共有し、EOLケアに反映できるよう全ての関係者が配慮すべきである。

(3)ICT(Information and communication technology)及び最新技術の活用を促進し、新しい地域コミュニケーションを積極的に構築していくべきである。
デジタル分野の格差(デジタルデバイド)を解消し、誰もがデジタル化の恩恵を受けられる環境を整備していく必要がある。また、社会的孤立を防止するために、新たな地域コミュニケーションを創生する必要があり、そこには移動支援の視点も不可欠である。

(4)高齢者におけるコロナ禍で顕在化した多様な健康二次被害を多角的なアプローチにより防止すべきである。
単なる健康維持への啓発だけではなく、健康維持に関わる適正な情報提供のあり方など多角的なアプローチにより健康二次被害の防止に最大限の注意を払うべきである。

(5)保健・医療・介護に関する平時からの情報分析を心掛け、公衆衛生領域における研究を推進し、かつその分野の人材育成も強化すべきである。
ワクチン開発や治療薬開発、高齢者への重症化予防対策などの普段からの推進、平時からの情報収集や分析など公衆衛生領域における研究をさらに推進すると同時に、臨床応用のシーズとなる基礎研究にも、事態が発生する以前からの継続的な支援が必要である。特に大学や研究組織などの研究者側がこれらの推進に心掛けるべきであるが、同時に、行政(データを持つ自治体や国、研究や人材育成を支える国)の役割も非常に大きい。

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東京大学未来ビジョン研究センター
教授 飯島勝矢