• 政策提言

    No.34

    知的財産権とイノベーション研究ユニット

日本・米国・カナダの協力による研究セキュリティ施策に関する提言

提言の骨子

2025年1月21日に実施された日本、米国、カナダの大学および政府の参加者による国際会議「日米加大学研究セキュリティ・インテグリティ国際ワークショップ」(未来ビジョン研究センター主催)における議論を踏まえ、3か国の協力による研究セキュリティ施策として下記を提言する。

  1. 日本・米国・カナダの大学と政府は、アカデミアの自由で国際的な研究の在り方に対して、基本的に同じ価値観を有しており、かつ現下に生じている研究インテグリティに対するリスクの存在を共有していること、3か国それぞれの、大学コンソシアムやそれに相当する組織、およびそれを支援する政府が相互に協力を行い、そのアプローチ方法を共有することは有益であることから、具体的な協力体制についての議論がなされるべきである。
  2. 研究インテグリティと研究セキュリティの概念については、G7に設けられたワーキンググループ(G7 Security and Integrity of the Global Research Ecosystem (SIGRE) Working Group)において整理が試みられたものであるが、特に研究セキュリティについては各国で定義が明確化されているとはいいがたく、今一度日米カナダで統一した概念を確認して、その考え方に対する信頼感を高め、それを研究現場と共有していくことが必要である。
  3. 研究インテグリティと研究セキュリティについて同じ概念を共有することが、その目標に向かう際に全く同じやり方を行うことを意味するものではなく、各国の実情に沿った実施方法を採用することが推奨される。その際にもお互いのアプローチの相違を認識しながら進めることが望ましい。

これらを踏まえながら、様々なリスク、さらに意図せざる共著の問題や、ペーパーミリングへの対処などについても取り組む国際的協力体制を充実させていくことが重要である。さらにこれらの取り組みの方向性については、日米カナダだけではなく、G7の各国でも同様に合意できるものと考えられるため、2025年のG7サミット(カナダ政府が議長国を務めアルバータ州のカナナスキスで開催する予定)において、政府間の連携を深め、価値観を同じくする大学が認識を共有し、具体的に自由な研究と知の探求などを最大限に活かせる環境整備を進める機会とすべきである。

この政策提言は、東京大学未来ビジョン研究センター知的財産権とイノベーション研究ユニットの研究成果の一つです。全文は以下よりダウンロードいただけます。