「サイエンス・オブ・サイエンス」翻訳書 出版

論文の「インパクト」はどのように生まれるのか?
科学者の「生産性」とは何によって決まるのか?
優れた研究はどのようなチームによってもたらされるのか?

論文のインパクトの差異はなぜ生まれるのか?科学的知見をもとにこれらの疑問に答える画期的な書籍が『サイエンス・オブ・サイエンス』です。

本書は、この新興の学際融合領域 Science of Science における世界的権威である、ノースウェスタン大学のDashun Wang教授とノースイースタン大学のAlbert-László Barabási特別教授による原著『The Science of Science』(Cambridge University Press, 2021) の日本語の翻訳版です。SciSci委員会を組織して翻訳を行い、この領域でホットストリーク、認知の遅れ、トピックの先進性等の研究成果を発表してきている未来ビジョン研究センターの坂田一郎教授らの研究室(坂田・森・浅谷・西本研究室)のメンバーなどが監訳を担当しました。

サイエンス・オブ・サイエンスは、2018年に同名の論文がScience誌上で発表されて以来、世界的に注目が集まっている領域ですが、通常、科学文献の大規模データと人工知能・データサイエンスの手法群を用いて、研究が行われています。そして、研究者のキャリア、論文の質の差異、チームの多様性、研究者間の相互作用、経時的変化などに関する分析を通じ、興味深い再現可能なパターンやその背後にある法則を導き出するとともに、それを用いた予測モデルの開発等を行って社会に貢献してきています。

本書は、このような領域を包括的に概観した初の書籍であり、難解な数式の羅列を避けつつ、豊富な逸話とビジュアルな図表を用いて、重要な概念を分かりやすく解説しています。具体的には、h-index、マタイ効果、ランダムインパクト則、ホットストリークなどの科学者のキャリアを左右する法則から、効果的な共同研究のタイミングと形式、小規模チームと大規模チームの特性の違い、科学研究に関するピア効果、科学的クレジットの割り当て方法まで、研究現場で直面する実践的な課題を科学的根拠に基づいて解明しています。「輝かしい雰囲気」といった言葉使いも印象的です。

本書に込められた知見は、研究者や大学院生の個人的なキャリア戦略作りから、研究機関の研究インテリジェンス、政府における科学技術政策の立案、さらには科学的知見を用いたイノベーション活動まで、幅広い領域で活用することができます。特に、科学技術研究活動を成功へと導くため、経験則や直感だけに頼らない、エビデンスに基づいた意思決定を目指している組織や専門家に対して、新たな指針となる一冊です。