ASEAN諸国は、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、徐々に、着実に前進しています。しかし、様々なSDGsには多くの相乗効果がある一方、いくつかのトレードオフは避けられず、重要な問題点になる可能性があります。その一つが、経済成長を維持しながら気候変動に取り組むことで生じる政策課題です。そこで本プロジェクトでは、このようなトレードオフに着眼し、ASEAN諸国における環境に配慮した商品やサービスを購入したいという消費者の意思支払額(WTP)の解明を目的として、実施されました。
- 本プロジェクトは2019年により発足しました。ローカルな知識を調査設計に組み込み、各国の言語を用いて調査を実施することが極めて重要であるため、現地の大学の研究者と密接に協力して実施しました。
- 本研究のフェーズ1では、ベトナム・タイ・ミャンマー・ラオスを対象に、太陽光・風力・小水力・バイオマスといった再生可能エネルギー発電技術に対するWTPを、離散選択実験(DCE)を用いて調査しました。これに加え、ベトナムでは仮想評価法(CVM)による調査を行いました。
- フェーズ2では、対象地域をマレーシアとフィリピンに拡大し、さらにベトナムではガソリンバイクと電動バイクのWTP調査を加え、発電技術以外のWTPを推定しました。
- フェーズ3では、対象地域をインドネシアに設定し、さらに2年目となるマレーシアでは再生エネルギーWTP調査とCDRの調査についてそれぞれ3種類の説明をランダムに表示するサーベイ実験を行いました。
本研究調査を通じ、エネルギー政策と持続可能な開発をめぐる意識に関して、ASEAN諸国間の地理的な差異を明らかにし、消費者における支払意思額の違いを捉えることができました。さらに、WTPはクリーンエネルギー技術を促進するための政策立案の際に役立てることができます。また、再生可能エネルギー技術の急速な普及をもたらすために、WTPはイノベーションによる製品コスト削減の目標としても活用が期待されます。