日米加大学研究セキュリティ・インテグリティ国際ワークショップ
(※招待者のみ)

  • 日程:
    2025年01月21日(火)
  • 時間:
    14:00-17:00
  • 会場:
    Zoom ウェビナー
  • 主催 (共催):

    東京大学研究インテグリティ総括室
    東京大学未来ビジョン研究センター

  • 言語:

    同時通訳あり

  • 対象:

    大学関係者 (※招待客のみ)

  • 参加申込み:

    要事前申込み。以下の参加申込フォームからお申込みください。
    ZoomURL:前日1/20(月)午後に、ご登録のアドレスあてにZoomURLをお送りします。

    ※未来ビジョン研究センターは、本イベントの情報を提供するため、また、今後の活動についての情報を提供するため、皆様の個人情報を収集させていただいております。この情報はいかなる第三者にも開示いたしません。

開催趣旨

近年研究活動の国際化、オープン化に伴う新たなリスクにより、開放性、透明性といった研究環境の基盤となる価値が損なわれる懸念を解消し、国際的に信頼性のある研究環境を構築するための研究セキュリティ・研究インテグリティに関する政策がG7各国を中心に打ち出されてきました。これらの政策は現在ファンディングエイジェンシーや公的研究機関、さらに大学などにおいて具体的な施策として、研究パートナーに対してリスク評価を行う動きが浸透してきており、ガイドライン等の整備がなされつつあります。わが国大学においても研究セキュリティに関するコンソシアムの結成の動きがあるところ、内外の動向を紹介し、我が国の大学等の研究機関が具体的に行うべきことについて示唆を得る目的で、2025年1月21日(火)に、国内外政府、海外大学等様々な立場の専門家をお招きして、標記ワークショップを、下記の通り東京ミッドタウン八重洲にて開催いたします。

ワークショップでは、内外を取り巻く本動向の時代的背景や政策的意義、諸外国の動向等、皆様の取組みの一助となるコンテンツを提供させていただきます。

プログラム
  • 14:00-14:10
    オープニング

    東京大学 理事・副学長/研究インテグリティ総括室 齊藤延人

  • 14:10-14:40
    報告

    「大学研究セキュリティ・インテグリティコンソシアムの狙いと今後の計画」
    東京大学未来ビジョン研究センター 教授 渡部俊也

  • 14:40-15:00
    コーヒーブレイク
  • 15:00-16:40
    パネルディスカッション

    【話題提供1】
    「ハーバード大学における研究セキュリティマネジメントとガイドライン策定」
    ハーバード大学 アラ・タマシアン

    【話題提供2】 
    「カナダにおける研究セキュリティ政策と大学の対応」
    トロント大学 ポール・ジャレット

    【パネル討論】
    「日米加の研究セキュリティ実践と課題」
    <モデレータ>
    東京大学産学協創推進本部 田辺雄史

    <パネリスト>
    米国政府 調整中
    カナダ政府 オーウェン・サウンダース
    文部科学省大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当) 高谷浩樹
    ほか調整中

  • 16:40-17:00
    まとめ及び提言、クロージング

    「今後の日米加の協力について」「G7に向けて」
    東京大学未来ビジョン研究センター 教授 渡部俊也

問い合せ先

知的財産権とイノベーション研究ユニット/産学及び社会連携システム研究ユニット 
ワークショップ事務局
E-mail:wlab [at] ifi.u-tokyo.ac.jp
([at]→@に置き換えてください)

【概要】
この会議は、研究セキュリティとオープンソースデューデリジェンスに関する国際フォーラムとして、日米カナダの政府、大学および企業の招待者による議論が行われました。会議では、日本政府の経済安全保障政策の最新動向、G7における研究セキュリティとインテグリティに関する取り組み、カナダにおける研究セキュリティの実践例が紹介されたほか、日米の事業者によるオープンソースデューデリジェンスに関する具体的な実施方法の紹介がありました。その後カナダ政府の研究セキュリティに関する政策、日本の大学の研究セキュリティの課題などの紹介の後、日本の大学のコンソシアムによる取り組みなどに関してパネル討論において意見交換が行われました。

【各セッションの主な内容】
日本政府の経済安全保障政策
内閣府の飯田審議官から、日本政府の経済安全保障政策について説明がありました。日本は国家安全保障戦略に基づき、サプライチェーンや重要技術、インフラ、データ保護などの分野で経済安全保障政策を推進しています。具体的な取り組みとして、外為法による輸出管理、インフラ事業者への規制、重要技術の特許非公開制度、セキュリティ・クリアランス制度の導入などが紹介されました。また、研究セキュリティについては、大学や企業に対し、国が支援を行う研究開発プログラムを実施するにあたり、リスクに応じて、リスク管理やデューデリジェンスの実施を求める旨の有識者会議の提言について紹介がありました。

G7における研究セキュリティとインテグリティの取り組み
内閣府の塩崎審議官から、G7における研究セキュリティとインテグリティに関する取り組みが紹介されました。G7では、研究エコシステムのセキュリティとインテグリティに関するワーキンググループを設置し、共通の原則やベストプラクティスを策定しました。研究インテグリティとは、研究の正当性や社会的妥当性を確保することであり、研究セキュリティとは経済的・戦略的リスクから研究コミュニティを保護する活動と定義されています。日本政府としても、大学等における研究の健全性確保に向けた対応方針を決定し、取り組みを進めています。

カナダ政府の方針
カナダ大使館のアニータ・パン一等書記官から、カナダ政府の研究セキュリティ政策が紹介されました。研究者と懸念組織との関係を注視しつつ、オープンな研究環境を維持する方針が説明されました。研究分野が機微技術分野であり、かつ懸念組織との関係があれば、政府の研究助成金が受けられなくなる可能性があることが明らかになりました。一方で、できるだけオープンで協力的な体制を維持したいとの考えも示されました。

カナダの大学における研究セキュリティの取り組み
トロント大学のポール・ジャレット氏から、カナダの大学における研究セキュリティの取組みが紹介されました。カナダ政府は、研究セキュリティセンターを設置し、大学への助言や政府助成金に係るデューデリジェンスを実施しています。機微な研究分野や指定研究機関リストを定め、リスクの高い研究領域や組織を特定しています。大学は研究セキュリティチーム(チーム・カナダ)を設置し、研究パートナーに対するデューデリジェンスやリスク評価を行っています。トロント大学では、国家安全保障の専門家によるデューデリジェンスチームを設置し、他大学とのコンソシアムを形成してベストプラクティスを共有しています。

日米の企業が行っているデューデリジェンスの具体的方法と支援方法
三菱電機の伊藤執行役員から、従業員のメールモニタリングによる情報漏えいリスクの検知について説明がありました。フェーズに応じた対策を講じており、AIを活用したモニタリングの導入が進められていることが分かりました。 FRONTEOの久光部長からは、オープンソースインテリジェンスを活用した研究者や組織のリスク評価サービスが紹介されました。研究者ネットワーク解析、株主支配ネットワーク解析、サプライチェーンネットワーク解析などのツールを組み合わせて、大学のリスク管理に活用できる可能性が示唆されました。 ストライダー・テクノロジー社のジョンストン戦略担当役員からは、オープンソース情報を活用して、懸念国が標的とし得る人材、技術、供給網等に対するリスクを評価し、学問の自由を維持しつつ大学が能動的にリスク管理を講じることができるサービスについて紹介されました。共同研究等を実施する際、関係者の軍事機関と潜在的な脅威を事前に特定することなどにより、大学の研究セキュリティ全般の拡充に向けて支援できる可能性が説明されました。

日本の大学における現状と課題
名古屋大学の佐宗副総長から、外国人留学生や研究者の受け入れ時の審査、在籍者のモニタリング、退職後のフォローアップなどの現状と課題が説明されました。外為法に基づく審査は年間2000件程度行われていますが、人的リソースが不足しているため、十分な調査ができていない状況が報告されました。また、研究テーマの変更時のモニタリングや、退職後の情報漏えいリスクへの対応が課題として挙げられました。

文科省の取り組み
文部科学省の西條審議官から、研究インテグリティ確保に向けた政府の取り組みが説明されました。大学の自主的な取り組みを尊重しつつ、ガイドラインの策定やベストプラクティスの共有などの支援策が検討されていることが明らかになりました。また、国立研究開発法人に比べて大学の取り組みが遅れている現状も指摘されました。

今後の課題
パネル討論を経て、大学のコンソシアム結成、ガイドラインの策定、米国・カナダとの連携、スタートアップ支援、セキュリティ・クリアランスの活用など、今後の課題が提起されました。あわせて経済安全保障政策の政府の立場からは、大学への追加的な支援やリソースの提供など、総合的な施策の必要性が指摘されました。 具体的には、カナダに倣い日本版の「チーム・ジャパン」に相当するコンソシアムを結成し、政府の支援を受けながらガイドラインや手順書を作成することが提案されました。外部の知見や情報を活用し、大学の負担を軽減することが重要であると強調されました。また、米国・カナダとの情報共有や共同での取り組みも有効であると指摘されました。 さらに、ペーパーミリングと呼ばれる論文の不当な作成と、不当な論文に基づく大学の誤った(高)評価への対応、大学発スタートアップへのデューデリジェンス支援の必要性や、セキュリティクリアランスホルダーによるガバナンス体制の構築も課題として挙げられました。今後、国際会議を開催し、具体的な施策を検討することが提案されました。加えて 大学発スタートアップへのデューデリジェンス支援体制を構築することや、これらの一般研究においてもセキュリティクリアランスホルダーが関与したガバナンス体制が有効であることが提案されました。