SSUフォーラム/GraSPPリサーチセミナー「G7広島サミット:重要性、安全保障、日本のリーダーシップ」
-
日程:2023年05月26日(金)
-
時間:10:30-12:00
-
会場:東京大学本郷キャンパス 国際学術研究棟4F SMBCアカデミアホール
地図 (対面イベント) -
主催・共催:
主催:東京大学未来ビジョン研究センター安全保障研究ユニット
共催:GraSPPリサーチセミナー -
言語:
英語(同時通訳なし)
-
お申込み:
本イベントは、東京大学とケンブリッジ大学の研究者がそれぞれの研究について対話する、UTokyo-Cambridge Voicesシリーズの一環として開催されます。
未来ビジョン研究センターとGraSPPリサーチセミナーは、今後の活動についての情報を提供するため皆様の個人情報を収集させていただいております。
この情報はいかなる第三者にも開示致しません。
本講演では、前週に広島で開催される2023年G7サミットに参加予定のトリステン・ネイラー氏(ケンブリッジ大学助教授)が、同サミットについての分析を発表します。サミットや多国間外交を専門とする同氏は、本講演でこうした場での日本のリーダーシップの重要性について議論し、ウクライナ戦争、中国との地政学的緊張、地域的・国際的な経済安全保障などに特に焦点を当てながら、サミットの成果を検証し、G7の今後の見通しを共有します。
講演者:トリステン・ネイラー ケンブリッジ大学政治国際関係学部 助教授
討論者:イー・クアン・ヘン 東京大学公共政策大学院教授
司 会:向山直佑 未来ビジョン研究センター 准教授
※本フォーラムは、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたします。
5月26日、東京大学未来ビジョン研究センター安全保障研究ユニット(SSU)はトリステン・ネイラー助教授をお迎えし、基調報告として、今回のG7広島サミットについてお話しいただきました。ネイラー助教授の報告に続けて、当初イー・クアン・ヘン教授(東京大学公共政策大学院)が討論を行う予定でしたが、急遽参加できなくなったため、同教授からの質問やコメントを司会が読み上げるとともに、佐橋亮准教授(東京大学東洋文化研究所)が会場で討論に加わり、その後、フロアから質問を募りました。同フォーラムでは、向山直佑准教授(東京大学未来ビジョン研究センター)が司会を務めました。
基調報告
ネイラー博士は冒頭で、G7に意味はあるのか、そして今回の広島サミットには意味があったのか、という問いかけを行いました。それに対して同氏は、G7には重要な意義があり、特に今回の広島サミットは歴史的なサミットであり、今後5年、10年経っても、極めて重要な出来事として記憶されるだろうと述べました。講演でまずネイラー博士は、簡単に1975年の誕生以来のG7の歴史を概観し、構成国の内訳や会議の性格などについて解説しました。
G7諸国が世界経済に占める割合は、1970年代の70%近い数字から、現在は40%あまりにまで低下しており、むしろG20の方が重要だという意見や、単なる形式的・儀礼的な場にすぎないという指摘もありますが、40%という割合は大きく、それが高度に統合された重要な経済圏を構成していることから、G7の重要性は依然として高いといいます。それに加えて、政治的な面ではその重要性がむしろ増しており、G7は新たな性格や目的を帯びるようになりました。それは、ルールに基づいた国際秩序や自由主義経済システム、そして民主主義的価値を守る、というものです。今回のウクライナ侵攻への対応においても、G7は非常に強い連帯を示しました。
次に、今回の広島サミットの意義について、ネイラー博士は、広島を開催地として選んだことには、平和へのメッセージ、核使用への警鐘、そして戦争からの復興の象徴として、重要な意義があると述べました。また、ロシアの侵攻に対して曖昧な態度を取ってきた、今年のG20議長国でもあるインドを招き、ウクライナに関する議論の場に参加させたことや、中国の脅威に対するメッセージを打ち出したこと、またグローバル・サウス諸国を招き、G7を繋ぐ役割を果たしたことにも意義があったといいます。これに加えて、今回の広島サミットは、日本の国際的な役割にとっても、新しい局面に入ったことを象徴しています。これまでの経済的な役割に限られない、政治的あるいは安全保障面での役割を今後果たしていくとのメッセージを国際社会に打ち出したことが重要であったと述べて、ネイラー博士は講演を締めくくりました。
ディスカッション及び質疑応答
ネイラー助教授の報告を受け、まず司会の向山准教授が、ヘン教授の質問を読み上げました。まず、これまでのサミットで今回の広島サミットと同じくらい重要なものはあったのか、グローバル・サウスとの関係において今回の日本のような役割は他の国にはできないものであったのか、といった点がまず提起されました。続いて佐橋准教授は、今回のサミットはゼレンスキー大統領の参加なしでも重要なものだったと言えるのか、そしてG7は将来的にアジアやアフリカやラテンアメリカといった地域に関して意味のある議論ができるのか、といった質問を行いました。
ネイラー助教授は、これらの問いに対して、他の重要なサミットとしては、アフリカの債務危機に対処した2005年のグレンイーグルスサミットが考えられること、そして日本の外交における重みは国際的に高く評価されており、アジアに位置しているという地理的な優位もあって、グローバル・サウスに対するアプローチについては欧米諸国には果たせない役割があることを指摘しました。佐橋准教授の質問に対しては、ゼレンスキー大統領の参加がなければ同じ評価にはならなかっただろうと指摘し、G7のグローバル・サウスに対する将来的な重要性については、将来的にはG7はまず間違いなくアジアやアフリカやラテンアメリカに対する実効性を失っていくだろうと回答しました。
その後、フロアからは他にも、今回のサミットの環境問題に関する成果や、インドで開催されるG20への影響、会議におけるシェルパの役割などに関する問いが寄せられ、最後まで活発な議論が交わされました。
*本フォーラムは、外務省の外交・安全保障調査研究事業費補助金により開催いたしました。