シンポジウム 地球温暖化対策を考えるためのエネルギー・シナリオ分析:2050年とその後を見据えて

  • 日程:
    2019年05月31日(金)
  • 時間:
    14:00-16:30
  • 会場:
    東京大学本郷キャンパス 経済学研究科学術交流棟・小島ホール(2F)小島コンファレンスルーム
    地図
  • 言語:

    日本語

  • 定員:

    60名

  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター 国際エネルギー分析と政策研究ユニット

定員に達したため申込みを締め切りました。
趣旨

世界中で気候変動の対策が加速しており、本年6月大阪で開催されるG20サミットの主要議題の一つとしても目されております。日本においても4月23日にパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(案)がまとめられ、政策の議論は再生可能エネルギーの着実な主力電源化、非連続なイノベーションの実現や、2050年とそれ以降を見据えた脱炭素化に移りつつあります。今回のシンポジウムでは日本を代表するエネルギー・シナリオ分析の研究者をお呼びして、環境研究総合推進費2-1704の研究成果を踏まえ、日本の2050年、また2050年以降の気候変動緩和策のあり方について多面的に検討して参ります。

プログラム(予定)
  • 14:00-14:15
    ご挨拶・「日本の長期戦略とエネルギー・シナリオ分析」

    高村ゆかり (東京大学未来ビジョン研究センター 教授) 資料(PDF)

  • 14:15-14:35
    「低炭素技術開発の技術・経済性評価とゼロカーボン電源システムの構築」

    井上智弘(科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター 主任研究員) 資料(PDF)

  • 14:35-14:55
    「電力部門の経済性評価と低炭素化に向けた課題」

    松尾雄司(日本エネルギー経済研究所 計量分析ユニット 計量・統計分析グループ  研究主幹) 資料(PDF)

  • 14:55-15:15
    「デジタル経済化のCO2排出量への影響」

    小林辰男(日本経済研究センター 政策研究室長兼主任研究員) 資料(PDF)

  • 15:15-15:35
    「わが国における2050年のゼロ排出に向けた可能性と課題」

    増井利彦(国立環境研究所 社会環境システム研究センター 統合環境経済研究室室長)) 資料(PDF)

  • 15:35-15:55
    「日本におけるモデル相互比較プロジェクト:大幅削減への含意」

    杉山昌広(東京大学未来ビジョン研究センター 准教授) 資料(PDF)

  • 15:55-16:30
    パネルディスカッション

    講演者ほか

  • ※プログラムは都合により変更になる場合があります。

    また本シンポジウムは環境研究総合推進費2-1704日本における長期地球温暖化対策経路の複数モデルを用いた評価と不確実性の分析の一環として開催されます。

5月31日(金)に、東京大学本郷キャンパス 小島コンファレンスルームにおいて約60名の参加を得て、公開シンポジウム「地球温暖化対策を考えるためのエネルギー・シナリオ分析:2050年とその後を見据えて」が、未来ビジョンセンターの国際エネルギー分析と政策研究ユニットの主催により開催されました。

冒頭、高村ゆかり氏により、日本のパリ協定における2050年目標である長期目標(案)について、その策定メンバーや策定過程も含めて説明があり、積み上げではない新しい社会の「あるべき姿」を描いた長期目標のビジョンとして位置づけが説明されました。

その後、井上智弘氏により、再生可能エネルギーの大量導入シナリオの分析結果の発表がありました。この電源構成モデルでは再生可能エネルギー技術の変数を内生化し、技術進展について独自に見積もっていることが強みの一つであります。太陽光や風力などの変動性電源が伸びるなか、慣性力を持つ発電技術(新型地熱発電、水素発電など)の重要性が明らかになりました。

松尾雄司氏は、時間高解像度の電源計画モデルの結果に基づき、再生可能エネルギーの大量導入のシミュレーションについて議論しました。無風で曇りのような日が一週間も続く場合を考えると、蓄電池に頼るのではなく、水素発電などのゼロ排出の火力発電が重要になる点を示しました。

小林辰男氏は、日本の経済のデジタル化のおよぼす影響をモデルにて見積もりました。デジタル化が進み経済が大きく変化する場合、カーボン・プライシングがなくても排出量が60%減少し、さらに炭素税を導入してCCSを活用すれば80%削減が達成されることを明らかにしました。

増井利彦氏は、パリ協定の1.5℃目標に整合的な2050年ゼロ排出シナリオを提示しました。モデル計算によれば、日本でもバイオマスCCS発電といった負の排出技術が極めて重要になることを示しました。また1.5℃目標の場合、限界削減費用、すなわち必要とされる炭素税や排出量取引などのカーボン・プライシングの金額が非常に高額になることも指摘しました。

杉山昌広氏は、日本のモデル相互比較プロジェクトの暫定的な結果に触れ、90%の排出源を目指すには負の排出技術などの検討も必要になることを述べました。また重工業の排出や、賦存量が相対的に小さく(現状では)高価な再生可能エネルギーなど、日本固有の事情を踏まえてシナリオを検討する必要性を指摘しました。

パネルディスカッションでは、長期的な話ではなく短期的な政策論議に直接役立つモデルの必要性も言及されました。また日本の政策過程でエネルギー経済モデルの活用が弱いことが問題とも指摘されました。さらに、長期戦略で言及されるイノベーションに関する研究など、モデルとモデル以外の研究の組み合わせも必要であるとのコメントもありました。