Complex Challenges in an Urban World (ワークショップ シリーズ-1)

  • 日程:
    2021年03月12日(金)
  • 時間:
    21:00-22:30 JST
  • 会場:
    ZOOMウェビナーでのオンライン開催となります
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  • 題目:

    Complex Challenges in an Urban World (Workshop Series-1)

  • 言語:

    英語
    (interprefyを使用しての英日の同時通訳有)
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  • 主催:

    東京大学未来ビジョン研究センター SDGs協創研究ユニット

定員に達したため申込みを締め切りました。
概要

シカゴ学派からロサンゼルス学派、都市をグローバルネットワーク内の結節点としてとらえる議論、ポストコロニアルの視点まで、多様な都市理論が、「都市」を構成する概念や、人々が「都市」という概念で意味する対象についての批判的な検討を行ってきました。その議論は様々な形で変化し続ける「都市」という社会的空間が持つダイナミックな性質について、理解を深めることに寄与しています。

これらの議論に基づいて本研究会は、変化をとらえるレンズとしてだけではなく、変化が起きるアリーナとして、都市空間がどのように機能しているかを探ります。過去から続いてきた社会的、政治的、経済的プロセスは、気候変動にともなうリスクや、国内外への移住、感染症の拡大、国境を越えた犯罪ネットワークなどと相互作用し、ますます都市化する世界において複雑な課題を構成しています。

2部構成の初回となる今回の研究会では、4名の研究者を招いてこれらの課題に関する理解を深めます。こちらのフライヤーをご覧いただき、ぜひご参加ください。

講演者

Dr. Kazuyo Hanai (Assistant Professor Institute for Future Initiatives, University of Tokyo, Japan)
‘Push Factors of “Urbanization without Growth” in Africa Great Lakes Region’

Dr. Danilo Mandic (Lecturer on Sociology, Harvard University, USA)
‘Impact of Refugee Dynamics in Cities’

Dr. Markus Schultze-Kraft (Arnhold Associate Fellow, Georg Eckert Institute, Brunswick, Germany)
‘Covid-19 and the City: Exploring the Linkages between a Global Biological Stressor and Urban Security Governance in Latin America’

Mr. Guillaume Soto-Mayor (Lead Research Engineer Conservatoire National des Arts et Métiers, Paris, France)
‘The Washington Consensus and the Rise of Organized Crime in Urban Areas’

=Moderator=
Dr. Nazia Hussain (Project Assistant Professor, IFI, University of Tokyo)

東京大学未来ビジョン研究センターが2回にわたり実施する研究ワークショップ「Complex Challenges in an Urban World」の第1回では、世界中の社会や政府の多くが直面する深刻な危機について幅広い議論が行われました。

開会に際して藤原教授は、近年、研究者や政策立案者の間で都市化の潮流をテーマとする議論が活発化しているが、実在する今日・明日の課題が混乱をもたらす中で、誰が都市を統治するかという基本的な問いが特に注目を集めていると述べました。実際に力を行使するのは誰なのか。一見、単純に見える問いですが、そこには伝統的な国家の概念と社会の境界線、とりわけ国の中と外の区別が曖昧になっている状況が表現されています。どこまでが国内問題で、どこからが国際問題なのか。治安(テロリズムや、都市の犯罪ネットワークなど)、権力とガバナンス、公衆衛生政策(紛争地域の状況はコロナ危機によってさら悪化している)、さらには環境問題やサステナビリティといった多くの課題において、境界線の位置づけが問題になっています。

フサイン特任助教からは、本日のワークショップの中心的テーマについて簡潔に説明がありました。現在の世界は相互に深く絡み合っており、多様なストレス(環境の悪化、国内外の人の移動、パンデミックなど)が同時にやってくるため、もはや危機は地域限定的なものではあり得ません。都市空間は変化の場であるだけでなく、こうしたダイナミックな現象を合理的に理解するためのレンズの役割も果たします。都市空間はダイナミズムの場であり、そこでは普通の人々が各々の方法で対応しながら生存し、政府が大きな権力を持つ一方で、同時にさまざまなプレイヤーが統治に関与しています。そのため大多数の人々にとっての基本的な現実は、困難かつ変動的なものになっています。都市空間について、また、統治し、統治される経験について深く探求して都市の複雑さを明らかにしない限り、政策対応は不十分なままになる恐れがあります。都市の現実とストレスの相互作用を理解する必要があります。最後にフサイン特任助教は、複数のアプローチを採用して学際的研究を行い、将来は悲観的かそれとも回復するかといった一般的な二項対立を脱却し、多くの将来像を描くべきだと主張しました。

ワシントンコンセンサスと都市部の組織犯罪の増加
ソトメイヤー氏はプレゼンテーションの中で、アフリカ諸国の組織犯罪の増加と統治機能の腐敗の起源をさかのぼり、ネオリベラリズム政策がもたらした破壊的役割に言及しました。犯罪の破壊的影響は、直接的・間接的暴力から経済の歪曲、搾取的な行政、法的な不処罰、農村地帯や都市部での文化的規範の発生にまで及びます。組織犯罪は政治家や政府高官の安定的資金源となっていますが、一定の状況下では、大規模な民衆の不満を呼び起こし、政治的不安定を引き起こす可能性があります。

ソトメイヤー氏は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行が規制、政治、社会経済において実施したネオリベラルな枠組みが、アフリカの特に都市部における組織暴力や組織犯罪の増加を助長したと主張しました。コモディティ価格危機と債務危機を受けて、世界銀行とIMFは自らの役割を開発セクターにまで拡大しました。それを端的に表しているのがHigh-Impoverished Poor Countries Initiativeの開始で、この取り組みは「ワシントンコンセンサス」と呼ばれるイデオロギー的枠組みに沿っています。この変化は、金融財政政策の引き締め、医療や教育といった公的部門のための財政支出の制限、さまざまな民営化、法人税の引き下げ、財産権や環境に関連する法的枠組みおよび消費者の権利の緩和といった施策に表れています。こうした政策の根拠になっているのは、市場を自由化すれば対外直接投資が増加するメリットが得られるという主張でした。

これらの政策は失敗率が高く、同時に社会、経済、政治制度に長期的な悪影響を及ぼしました。これらの政策の結果、公共サービスの質が低下して大多数の国民の生活が悪化し、民間が天然資源の採取を支配するようになり、農業生産が減少し、単一文化制度が進み、地方の失業率が上昇し、土地の不法利用や環境悪化が進みました。

ヘロインやコカインの密売から環境犯罪(有害廃棄物の取引や、鉱物や森林の不正利用など)まで、アフリカで活発化している犯罪活動は、こうした広範な背景の中に位置づける必要があります。特に環境犯罪については、構造調整政策が実施したネオリベラリズム政策によって法令が曖昧になったため、犯罪ネットワークや違法企業が膨大な経済的・政治的利益を得ることが可能になっており、背景を踏まえてとらえることがとりわけ重要です。こうしたさまざまな状況が総合的に作用して企業の可能性を損ない、都市部での暴力を助長し続けています。

難民の都市化
このプレゼンテーションに続き、マンディック氏がサハラ以南アフリカにおける難民と都市化について議論を展開しました。難民は都市化の担い手であるだけでなく、目的でもあります。マンディック氏は、アフリカでは多数の都市化が立て続けに起きていると強調しました。こうした都市への流入に占める難民の比率も上昇しているようです。ある年の状況では、約660万人が住まいを離れ、その大半が近隣の国へ向かいました。欧州や北アフリカなど、近隣ではない国に到着した難民の比率はわずかでした。

都市に向かう難民の動きのダイナミクスを理解するにあたっては、多様な課題が存在します。第1に、都市の難民を対象とする研究が依然として十分ではなく、集まる研究資金も少ないことです。第2に、経済移民、無国籍の遊牧民族、国内避難民(IDP)など、難民を明確に分類することが有益だということです。大半が国内避難民であり、都市化の主要な要因になっています。

アフリカの難民に関する報道は多いものの、さまざまな紛争や武装勢力ほど注目を集めてはいません。例えばコンゴ民主共和国のゴマでは、暴力を逃れてきた難民が都市を形成しています。また、国際的な人道組織も、豪華な住宅インフラや衛生設備を建設して都市の景観に貢献しています。さらに、大勢の国内避難民がやって来ると、新しい住民と地元住民の間に緊張が生まれることもあります。上層階級の市民が持つ先住性は、ときとして難民の集団に対する大きな武器になります。一方で、こうした現象に対抗して難民の組織ができることもあります。

こうした傾向は、都市化のそれと重なります。例えば人々は気候の厳しいところから穏やかなところへ移動します。また、若者が大量に流入して、政治的混乱の原因になる可能性もあります。さらに、都市にやって来た人々は、地方では許容していた生活環境を、快適さが足りないとして受け入れないかもしれません。

地元の社会や政治経済への難民の融合をめぐる議論は、「有益だから、受け入れるべき」というインストルメンタリストと「有益かどうかにかかわらず、受け入れるべき」というプリンシパリストのどちらかになる傾向があります。ケニア、ナイロビのリトル・モガディシュは、代表的な事例です。政府は難民を違法とする政策を実施しましたが、ソマリアやウガンダから来た難民は地元の社会や労働市場に溶け込んでいます。難民と、それを受け入れる社会のジレンマが浮き彫りになっている例です。

生態系の大規模な破壊も、民族間暴力や従来から存在する分断を激化させており、数千万人規模の人の移動が発生することも考えられます。そうしたシナリオを想定し、難民を含めこれまで以上に多くの人々が都市に移住する可能性を考慮すると、都市化においても同様にこうした議論が重要になります。

アフリカ大湖沼地帯における「成長なき都市化」の推進要因
このプレゼンテーションに続いて、華井氏がアフリカ大湖地域における都市化について事例研究を紹介しました。華井氏は、人々が経済的機会を求めて繫栄する都市に向かうとされる従来のケースと異なり、紛争を逃れた結果として都市化が起きていると主張しています。コンゴ民主共和国の農村地帯から都市への大規模な避難民の流入は、その明白な事例です。(コンゴ民主共和国の)東部地域だけで100を超える武装グループが存在します。武装グループはマフィアや犯罪者のように鉱物を支配し、戦闘行為を行い、市民に暴力をふるい、その結果、人々は都市に向かいます。

コンゴ民主共和国は、アフリカで最も都市化が進んだ国のひとつです。キンシャサには1200万人が居住し、アフリカ第3の都市になっています。しかし都市への流入が進んでいる(2019年は45%)とは言え、コンゴの人口の70%が農業従事者です。雇用機会と都市人口比率のこうした矛盾は、劣悪な生活環境となって表れています。

コンゴ民主共和国東部の都市化の動向を理解するに当たっては、紛争の歴史、法的な土地の管理とコミュニティの土地に対する伝統的・慣習的な保有権(customary tenure)との競合、都市の中に形成され、グループ間に緊張を生じさせるエスニック・クラスターなどの背景の中で理解する必要があります。加えて、支配権の重層性や土地管理の状況が、都市計画の妨げになっています。コンゴ民主共和国東部の都市ブカヴは、こうしたパターンの縮図です。

慣習的保有権に問題はないものの、一方で、腐敗した政府制度には都市住民のニーズに対応する十分な機能が備わっていません。大湖地域の都市化を研究する際は、紛争、エスニック・グループ間の緊張、土地管理問題などの影響を理解することが必要です。

「King Covid」と都市:世界的な生物学的ストレス因子が中南米の都市の治安統治に及ぼす影響を考える
最後にプレゼンテーションを行ったシュルツ・クラフト氏は、新型コロナウイルス(Covid-19)という世界的な生物学的ストレス因子が(暴力的な)組織犯罪が多発する中南米社会の都市の治安統治に及ぼす影響について検討しました。同氏によると、パンデミックが都市に及ぼす影響に関して新たに公表されている文献は、破滅感と高揚感(「何もかもが変わってしまう」という意識と「過去より良いものを構築するチャンスだ」という意識)に二分されると言います。しかし、パンデミックが都市環境の統治に及ぼす影響を評価するには、「あれか、これか」という視点ではなく、もっと適切な見方があると思われます。

シュルツ・クラフト氏は多様な外部ストレス要因について議論を展開し、Covid-19は人獣共通感染症であり、人間が作ったものではないが人間が伝染するという事実をもとに、他のストレス要因と異なると述べました。国境を越えて伝播するパンデミックの影響は、伝播の方法はそれぞれ異なるものの、北の先進国と南の開発途上国の双方に及びます。この点で、Covid-19は人間が作り出した他の外部ストレス要因と区別できます。

Covid-19が中南米の治安に明白な影響を及ぼしているかどうかを研究する中でシュルツ・クラフト氏は、「バイオセキュリティ」に関する新しい論説が急増し、政治秩序と社会秩序および国民を既存のリスクから守るための権利に関する(国の)主張が再定義されていることを示しました。今回のパンデミックで社会のどの集団が影響を受けているかを見ると、特に治安などの公共財の提供という点では社会のすべての集団がCovid-19関連のストレスにさらされているように見えますが、しかし都市部の低所得層や貧困層が特に深刻な影響を受けています。

Covid-19が生み出す治安関連のストレスについては、治安というものを、権力者の言葉と力の行使を通じた政治秩序と社会秩序の一連のプロセスであると定義することが有益です(供給サイド)。例えば組織化された力など(これに限定されるものではないが)も一例です。需要サイドからは、暴力その他の外部リスクから守られるという市民の(より広範には人間の)権利として理解することができます。そこには、その権利を行使する能力も含まれます(Luckham and Kirk, 2013)。世界的な生物学的ストレス因子であるCovid-19は、治安の供給サイドと需要サイドの双方に影響を及ぼしています。

このような概念化に立脚すると、治安統治とは、秩序を構築・維持し、人々が暴力や外部リスクから守られるという権利を保証するために、国家と非国家主体の双方が包括的な拘束力を持つ規則と規範の策定と実施を通じて行う政治権力の行使を意味します。シュルツ・クラフト氏が分析した中南米には複合的なcrimilegalな秩序が存在し、社会規範や道徳規範における合法と違法・犯罪の境界が不明瞭で、合法的国家や違法・犯罪国家と非国家主体の双方が相互に調整しながら政治権力を行使しています。その結果crimilegalな統治プロセスでは、合法的手段と暴力を含む違法・犯罪的手段を流動的に組み合わせることによって、治安などの公共財を含む各種リソースの配分や秩序の構築が実施されます。

この一次分析より、次の結論が導かれます。中南米諸国はCovid-19に非常に大きな影響を受けている(あるいは脅威を無視もしくは過小評価している)ものの、非合法・犯罪的な非国家主体への影響はそれほど大きくはありません。一方、政府は特に人口密度の高い都市部の環境において「バイオセキュリティ」を主張することが増え、実際のところパンデミック下の都市の治安統治では、非合法・犯罪的なものも含めて非国家主体の役割が強化されている実情があります。おそらく都市の治安統治に対する他の人為的な外部ストレス要因の影響とはいくらか異なり、秩序の維持、それから暴力やCovid-19のような外部リスクから保護される権利の保証は、(非合法・犯罪的な)非国家主体が政府機関や国家主体とのcrimilegalな交流と調整を通じて管理していくことが増えると思われます。そこから、こうした動向によって現代の中南米都市の治安の秩序が描き直されるのかという疑問が生まれます。私たちの目前で、crimilegalな仕組みが深く根付こうとしているのでしょうか。私たちは、どう対応すべきでしょうか。

以上のプレゼンテーションに続き、パネリストと参加者の間で充実した議論が交わされました。