• 飯島勝矢 未来ビジョン研究センター教授 / 高齢社会総合研究機構 機構長  

飯島勝矢教授らの研究が「アジア健康長寿イノベーション賞2022」の日本国内での最優秀事例に選ばれました

フレイル予防を軸とした地域高齢住民主体の健康長寿まちづくりと新価値生きがい創造

人生 100 年時代が現実的になってきた今、真の健康長寿実現のために以下の諸課題があります。

  1. 【活力ある健康長寿まちづくり・地域共生社会の構築】一人ひとりが支える側、支えられる側として多様な生きがいや幸福感を実感でき、何歳になっても健康増進に向けて前向きに取り組める地域コミュニティの構築
  2. 【介護予防事業の諸課題の山積】多様な改善点(参加者の少なさ、低継続率など)があり、さらに平均寿命と健康寿命との差も直近15年間では十分な改善なし(男女平均で約10年)
  3. 【専門職による従来の個別介入だけへの依存】もっと住民活力をフル活用する住民主体健康増進アプローチを強化すべき
  4. 【各疾患単位からフレイル予防の視点へ】医療系専門職からの各疾患単位での管理だけではなく、フレイル概念の特徴(身体的/心理的/社会的な多面性、可逆性あり)を踏まえ、個人への介入指導と地域づくりの両面を取り組むべき
  5. 【科学的根拠ベースの戦略】エビデンスベースの住民主体活動を活性化させ、汎用性(全国自治体への広域展開)のあるシステム基盤構築が求められる

今までは様々な地域で健康増進活動が存在しますが、エビデンスによる裏付けが弱く、実践したい方々だけの動機だけに限定されています。前述の課題を踏まえ、地域高齢者主体のフレイル予防活動による新たな健康長寿まちづくりシステム(豊富な科学的根拠を基盤)を考案し、どんな自治体でも導入し継続し得る全国共通基盤を構築します。

具体的には、高齢者大規模コホート研究(柏スタディ:2012年~)解析から、フレイル予防の3つの柱『栄養(食事/口腔機能)、身体活動、つながりと社会参加』が重要であり、さらに個々人の継続性のある形でこれらを三本柱(三位一体)として生活に反映した方が良いというエビデンスを創出しました(リスク7倍)。この新知見を活かし、地域高齢者を新たな住民ボランティア(フレイルサポーター)とする養成研修システムを構築し、高齢住民同士だけの集いの場で総合的に評価し、お互いに気づき自分事化し行動変容していく住民主体フレイルチェック活動のモデル化を行いました。(全国93市区町村で導入し、新規要介護リスク予測も可能)

【革新性】

  • しっかりとしたエビデンスに基づいたフレイル危険度のリスク評価、およびその後の行動変容の勧奨において、地域在住高齢者フレイルサポーターによる「高齢住民同士」でのフレイルチェック活動をモデル構築。どんなサイズの自治体でも導入可能とする汎用性のある全国展開基盤を構築しました。
  • 従来の医療専門職による介入では、一方的な指導になる傾向にあり、高齢住民の新たな意識変容が起きにくい現状がありました。それを高齢住民同士の独特の世界観・価値観で、住民の顕著な意識変容を促すことが出来ました。
  • さらにサポーター自身においても、地域貢献による生きがいと健康にも好循環するモデルを構築しました。
  • 導入モデル自治体からのフレイルチェックデータ解析により、リスク予測能等の最新エビデンスを常に創出・更新でき、全国導入自治体へ迅速に情報共有も可能です。

※「アジア健康長寿イノベーション賞」は、日本政府によるアジア健康構想の一環として、ERIAおよびJCIEが2020年に創設した表彰事業で、健康長寿の達成、高齢者ケアの向上に資する取り組みをアジア各国から募集し表彰するものです。テクノロジー&イノベーション、コミュニティ、自立支援の3分野で、高齢化による様々な課題の解決となる革新的なプログラム、サービス、製品、政策を募集・表彰することにより、アジア地域内で優れた知見を共有、その実際の応用を後押し、この地域の共通課題である急速な高齢化に共に対応していくことを目的としています。