• 論文

    向山 直佑 未来ビジョン研究センター准教授

向山直佑准教授の論文がEuropean Journal of International Relationsに掲載されました

今日の国際秩序の根幹をなす主権国家体制の歴史について、従来の研究では、領域主権はまずヨーロッパで成立し、その後植民地支配などを通じて他地域に広がった、と想定されてきました。これはすなわち、近代国家の中心的な要素の1つである領土、より具体的には直線的な国境も、西洋との邂逅以前の非ヨーロッパには存在しなかったとされてきたことを意味します。

しかし本研究は、近世日本の事例を用いて、ヨーロッパ外でもヨーロッパに類似した領域秩序が発展していたことを示し、こうした前提に疑義を投げかけるものです。江戸時代の藩境紛争、境界石や藩境塚、そして地図などを分析した結果、諸藩はこの時期既に明確に区切られた国境とその中での排他的な支配を樹立しつつあったことがわかりました。

こうした研究結果は、ウェストファリア条約によって主権国家体制が成立したという、従来国際関係論において共有されてきたいわゆる「ウェストファリア神話」に対して、そのヨーロッパにおける確立の時期を争う近年の批判とは異なり、それがヨーロッパのみで起こった変化ではないと主張する地理的な観点からの批判になります。また、最近の「非西洋国際関係論」の文脈からは、従来西洋と非西洋の差異に着目してきた既存研究に対して、むしろその共通点に注目することで、新しいアプローチを提供しています。日本研究にとっても、明治維新の前後に断絶ではなく連続性があった可能性を示唆していることが貢献になると考えられます。

タイトル:


The Eastern cousins of European sovereign states? The development of linear borders in early modern Japan

著者:


N.Mukoyama

ジャーナル:


European Journal of International Relations
First published online November 1, 2022
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/13540661221133206

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東京大学未来ビジョン研究センター
准教授 向山 直佑
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