• 論文

    坂田 一郎 工学系研究科 教授

坂田一郎教授らの研究論文がScientific Reportsに掲載されました

本研究では、各国の研究者が出す論文群のリサーチトピックを定量的に時系列に比較することで、国レベル又は大学レベルでの研究トピックの総体的な進み/遅れ具合を観察しています。結果として、欧米(西ヨーロッパと英語圏の先進国)およびアジアの都市国家(シンガポールなど)と、その他の国(中国や日本やブラジルなど)との間に、研究トピックの進み/遅れの関係が確認されました。具体的には、その他の国が欧米と比較して、1~2年程度、遅れている傾向にあります。大学別では、例えば、オックスフォード大学とケンブリッジ大学の間には差異がありませんが、北京大学や清華大学については、オックスフォードと比べて1~2年の遅れがみられます。この傾向は長期間に渡って持続しており、また、あらゆる学術分野で共通していることが分かりました。

次に、そのような国別に研究トピックのタイムラグが生じるメカニズムについて、論文の共著ネットワーク上で研究トピックが伝播すると仮定し、研究者の共著ネットワークのCore-Periphery構造の影響を考察しました。その結果、各国の学術コミュニティにおける固有ベルトル中心性(eigenvector centrality)の高い科学者の比率と、トピックの先進性との間には、強い相関があることがわかりました。

このような結果は、日本や東京大学が、リサーチトピックで学術界を先導していくためには、世界レベルの学術ネットワークにおいて存在感の高い研究者をより多く擁するようになることが重要であることを示しており、そのための方策として、優れた研究者の招聘、国際研究拠点の設立・拡張、頭脳循環の拡大が大事であることを示唆しています。

タイトル:


Quantifying progress in research topics across nations

共同研究者:


K. Asatani, S. Oki, T. Momma, I. Sakata

ジャーナル:


Scientific Reports vol.13
https://www.nature.com/articles/s41598-023-31452-8

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東京大学工学系研究科 教授
未来ビジョン研究センター 副センター長
坂田 一郎
https://ifi.u-tokyo.ac.jp/people/sakata-ichiro/