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    グローバル・コモンズ・センター

グローバル・コモンズ・スチュワードシップ(GCS)指標2022版の発表

~グローバル・コモンズを回復するために、G20諸国は国外に波及する負の環境負荷を抑制しなければならない~

東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)グローバル・コモンズ・センター(CGC)と国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)は、最新の報告書『グローバル・コモンズ・スチュワードシップ(GCS)指標 2022年版(第3版)』を発表し、各国の経済活動によるグローバル・コモンズに対する国内および国外に波及する環境負荷を追跡しその原因となるサプライチェーンを明らかにしました。

本報告書は、各国が経済活動によりグローバル・コモンズ(気候システムや陸上生物圏、海洋などから構成される安定的でレジリエントな地球システム)に与える国内およびに国外での負の環境負荷についての最新状況をとりまとめています。グローバル・コモンズはより一層の危機に瀕しており、我々は今すぐ行動を起こす必要があることを本報告書は強調しています。具体的には、いずれの国も環境への負の影響を抑えながら、高いレベルでの人間開発(一人当たりGDPや人間開発指数(HDI)で測定)が達成できていないことが明らかになりました。特に、G20諸国を含む経済的に豊かな国々は、持続可能ではない消費によって国外へ波及する負の環境負荷を多く生み出しており、これらの国々はこれまでの報告書の中で最低の評価となりました。これらの結果から、各国の経済活動から生じる国外に波及する環境負荷に対処するためには、国家の政策や経済システムの枠組みに、自然資本の価値および自然資本を保護しなかった場合のコストを、より適切なかたちで組み込む必要があることが示されました。

最新の貿易データ(多地域産業連関表)や環境研究および産業生態学などの知見や技術を駆使して完成した『GCS指標 2022年版』は、国際貿易により国内外で生じる環境負荷を詳細に分析しています。その結果、各国の繊維製品や衣料、建設資材に対する需要は、国外での温室効果ガス(GHG)排出における主要因であることが明らかになりました。また、林業、伐採、牧畜分野からの需要によって国外の森林が破壊され、米や穀物に対する需要が国外での水ストレスをもたらしていることも分かりました。

本書の主執筆者であり、東京大学理事・CGCのダイレクターを務める石井菜穂子教授は、次のように述べています。「グローバル・コモンズを守るためには、生産国と消費国の両方が行動を起こす必要がある。そのためには2つのことが必要です。第一に、国内の生産だけでなく消費の観点からも目標を立てること、第二に、自然資本を評価し、経済的意思決定に組み込むための行動をとることです。」

また、本報告書の共著者であり、SDSNのヴァイス・プレジデントを務めるギィヨン・ラフォルチュン氏は、「野心的な政策や投資、グローバルな協力を通じて、持続可能ではない様々なサプライチェーンに内在する負の波及効果を抑制しなければなりません。G20の議長国を務めるインド(2023年)、ブラジル(2024年)、南アフリカ(2025年)は、世界的な協調行動とさらなる努力を促進することで、グローバル・コモンズに対する生産国と消費国の間で生じる負の影響を削減し、地球システムと人類に利益をもたらすことができます」と述べています。

さらに本報告書では、グローバル・コモンズへの負の影響をモニタリング・抑制するために、最新技術を駆使しながら、国際、国、産業、企業などあらゆるレベルでの強力なデータシステムを構築するための国際社会におけるさらなる努力が必要であることを訴えています。

GCS指標は、グローバル・コモンズを守るための政策立案や投資の優先順位に役立つ情報を提供するために、東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)グローバル・コモンズ・センター(CGC)の主導のもと、SDSN、システミック社、ポツダム気候影響研究所(PIK)、世界資源研究所(WRI)、イェール大学環境法・政策センターと協力して、2020年から研究開発を続けているものです。

報告書本体やその元となるデータベース、国別プロフィールなどのファイルは以下よりご覧いただけます。

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