【イベント報告】グローバルメタン収支2020報道関係者・一般向け講演会及び科学フォーラムの開催
2020年8月6日にフューチャー・アースのグローバル研究プロジェクトであるグローバル・カーボン・プロジェクト(以下GCP)のつくばオフィスが温室効果ガスの一つであるメタンの全世界的排出及び吸収量を試算したグローバルメタン収支(Global Methane Budget)の結果について周知するオンライン会議を開催しました。当該報道関係者・一般向け講演会及び科学フォーラムは産業界やメディア、研究機関、大学生等の様々なセクターから国内外の219人が参加しました。
当該イベントはGCPの傘下で世界の69の研究組織から91人の科学者が参画し研究を行ったメタン収支2020を取り上げました。研究は世界規模でのメタンガスの概況を更新し、全ての発生源と吸収源をより詳細に網羅した最新版の世界のメタン収支です。研究チームはボトムアップとトップダウンの手法を採用し、最近20年間(2000–2017)のメタン収支の時間的・地域的な変動を明らかにしました。
8月6日のオンライン会議では国立環境研究所(NIES)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)及び気象研究所(MRI)から10人の科学者がグローバル・メタン収支の結果について説明し、参加者との活発な議論が行われました。午前中の報道関係者及び一般の方向けの講演会では、まず初めにNIES地球環境研究センター副センター長の江守正多氏が「気候変動研究の概要」について世界が直面する気候変動の課題、温室効果ガスのひとつであるメタンの役割、そして、なぜそれが社会にとって重要なのかについて解説しました。次に、NIESの遠嶋康徳氏と伊藤昭彦氏がMethane Budget 2020の概要について、大気中のメタンが主として人間活動によって増加していることや、メタンの放出への日本の寄与などについて説明しました。二つの発表に続いての質疑応答とパネルディスカッションでは、地球環境研究センター長の三枝信子氏とフューチャー・アース国際事務局日本ハブ事務局長の春日文子氏が参加し、参加者やパネリストとの意見交換が行われました。
午後の部の科学フォーラムは英語で行われ、研究の技術的側面やメタンの排出推計に使用された最先端の手法に焦点を当てて発表が行われました。まず、JAMSTECのプラビル・パトラ氏とNIESのシャミル・マクシュトブ氏がセッションの導入として、研究結果の概要と収支の影響について説明しました。次の発表では、NIESの丹羽洋介氏がグローバルなメタン排出の増加パターンとその要因について分析した結果を報告し、同じくNIESの遠嶋康徳氏と町田敏暢氏が分野を超え、国際的なコラボレーションを要した地表及び大気のメタン測定方法について解説しました。最後に、メタン排出のモデリングについて、伊藤昭彦氏とナビーン・チャンドラ氏が発表しました。締めくくりのパネルディスカッションでは三枝氏とフューチャー・アースのジル・シウンが参加し、グローバル・カーボン・プロジェクトつくばオフィス所長のピーラパン・ジトラピロム氏がモデレーターを務め進行されました。
【参考情報】
- プレスリリース
・日本語
・英語
- イベント録画
論文とデータ
- Saunois et al. (2020) The Global Methane Budget 2000-2017. Earth System Science Data. https://doi.org/10.5194/essd-12-1561-2020
- Jackson et al. (2020). Increasing anthropogenic methane emissions arise equally from agricultural and fossil fuel sources. Environmental Research Letters. https://doi.org/10.1088/1748-9326/ab9ed2