【イベント報告】「世界の一酸化二窒素(N2O)収支2020年版」報道関係者及び一般向けイベント

簡易版一酸化二窒素(N2O)収支図<br />
Source: Global Carbon Project
簡易版一酸化二窒素(N2O)収支図
Source: Global Carbon Project

文:GCPつくば国際オフィス事務局長Peraphan Jittrapirom、翻訳:GCPつくば国際オフィス尾島 優雅子

2020年10月、グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)がとりまとめた評価報告書「世界の一酸化二窒素(N2O)収支2020年版」が公開されました。GCPつくば国際オフィスは、この内容を広く紹介するため、オンラインによる記者会見と公開フォーラム「『世界の一酸化二窒素(N2O)収支2020年版』と食料システム」を開催しました。記者会見には数名の報道関係者に参加いただき、また、公開フォーラムには、国内外の企業、報道機関、研究機関、大学生など、さまざまな分野から331名の方に参加登録をいただきました。

評価報告書「世界の一酸化二窒素(N2O)収支2020年版」は、GCPのとりまとめにより、世界の44の研究機関から参加した70名の科学者からなる国際チームによってまとめられました。この成果をまとめた論文が10月7日(ロンドン時間)出版のNature誌に掲載され、過去40年間にわたって世界のN2O排出量が増加し続けていることが報告されました。この増加の主な原因は、人間の活動による放出が30%程度増えたことです。農業における窒素肥料の使用、家畜からの堆肥製造といった農業活動が増加したことが、排出量増加の主要因となっていました。

10月29日に開催した公開フォーラム「『世界の一酸化二窒素(N2O)収支2020年版』と食料システム」では、本報告書の共著者3名(国内からは国立研究開発法人国立環境研究所(NIES)と国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、国外からは北京大学)が講演し、世界の一酸化二窒素(N2O)収支の研究結果について詳しく解説しました。また、千葉大学、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(NARO)、総合地球環境学研究所(RIHN)の3名の研究者や学者が講演を行い、パネルディスカッションに参加しました。 この公開フォーラムは午前と午後の2部構成で開催されました。午前の部は日本語で行われ、伊藤昭彦氏(NIES)による評価報告書の解説から始まり、続いて、林健太郎氏(NARO)による「人類の食料生産・消費がもたらす窒素問題」、犬伏和之氏(千葉大学)による「土壌の視点から見る一酸化二窒素(N2O)発生のプロセスと実現可能な緩和」の講演が行われました。パネルディスカッションでは、江守正多氏(NIES 地球環境研究センター 副センター長)が進行役を務め、講演者の他、三枝信子氏(NIES地球環境研究センター長)と春日文子氏(フューチャー・アース国際事務局日本ハブ事務局長)も参加し、活発な意見交換と質疑応答が行われました。

午後の部は英語で行われ、Prabir Patra氏(JAMSTEC)による評価報告書についての解説から始まり、Feng Zhou氏(北京大学)が「世界の農地-N2O排出と緩和の可能性」の講演を行いました。続いて、林健太郎氏(NARO)と犬伏和之氏(千葉大学)が窒素と土壌に関する洞察について講演し、Steven R. McGreevy氏(RIHN)は「気温上昇を1.5°Cに抑える食料システムへの移行」の講演を行いました。パネルディスカッションでは、Peraphan Jittrapirom氏(GCPつくば国際オフィス事務局長)が進行役を務め、講演者の他、Giles Sioen氏(NIES、フューチャー・アース国際事務局(研究・イノベーションチーム共同代表))が参加して、活発な議論を行いました。

参考情報

  • イベントビデオ動画 (YouTube)

午前日本語セッション

午後英語セッション

  • 報道発表と記者説明会

–  報道発表資料

記者説明会(日本語)

記者説明会(英語)

  • 学術論文とデータ

– Tian et al. (2020) A comprehensive quantification of global nitrous oxide sources and sinks. Nature. https://doi.org/10.1038/s41586-020-2780-0

一酸化二窒素収支データ