世界の二酸化炭素収支(Global Carbon Budget)2020の発表

グローバル・カーボン・プロジェクト(Global Carbon Project; GCP)が毎年公表しているグローバル炭素収支(Global Carbon Budget)の2020年値が2020年12月11日に発表されました。GCPは、地球規模の環境課題や地球システム科学の研究を行っているフューチャー・アースのグローバル研究プロジェクトの一つです。今回の評価は世界各地の68機関より86名の研究者が参加する国際研究チームで行われました。その中には日本の研究機関に属する6名が含まれます。

世界の多くの研究者による観測や数値シミュレーションなどのデータを用いた総合的な解析により、GCPは、2019年の地球全体のCO2収支のため、人為的なCO2排出量、大気への蓄積量、海洋によるCO2正味吸収量、陸域によるCO2正味吸収量の値を算出しました。

さらにGCPは、直近10年(2010年―2019年)の地球全体のCO2収支の平均を算出するとともに、2020年の速報値も推定しました。2020年の化石燃料消費によるCO2排出量は、2019年と比較して7%減少する見込みです。減少の主要な要因としては、新型コロナウィルスの感染流行に伴う規制によって航空や道路における交通が昨年に比べて落ち込んだことなどが挙げられます。この削減量は、国際的に地球温暖化を防止するために策定されたパリ協定で定められている1.5度目標を達成するために、2020年―2030年の間に毎年7.6%削減が必要とされる推計と同程度です。一方で、昨年の排出量の減少は社会的な改革や制度導入によるものでは無いため、今年以降の傾向は新型コロナウィルスの影響に対する経済措置等の導入などで長期的に増加に転じる可能性もあります。また、世界的に今年の二酸化炭素排出量が減少してますが、収支は以前プラスです。そのため、大気中のCO2濃度は上昇の一途を辿っており、2020年においても2.5 ppm*上昇し、平均的に産業革命以前と比べて48%高い412 ppmに達する見込みであります。

12月11日のグローバル炭素収支の発表と同日に国内関係者に向けてオンライン記者会見も行われました。記者会見ではグローバル炭素収支の研究に関わった国立環境研究所の研究者などが今年の収支の概要を説明し、質疑応答も行われました。

* parts per million (百万分の一単位)

【参考情報】