ワーキング・ペーパー 「パンデミック政策の日米国際比較」”International comparison of pandemic policies in the United States and Japan“ を掲載しました
外務省外交・安全保障調査研究補助金事業「経済安全保障分野における主要国の動向(米中欧)と日本が採るべき政策」プロジェクトの報告として、ワーキングペーパー「パンデミック政策の日米国際比較」”International comparison of pandemic policies in the United States and Japan“(伊東久仁・加納信吾/東京大学大学院)を掲載しました。
(概要)危機管理政策の分野においては、オールハザードアプローチ (AHA)と呼ばれる概念が広く用いられています。AHAは、自然災害、パンデミック、人為的な災害、テロなど、あらゆる危機に対して共通した対処能力を構築することを目指す考え方で、米国など多くの国で採択されています。一方、各災害に特化した個別の対策をそれぞれ策定するアプローチはシングルハザードアプローチ (SHA)と呼ばれ、日本などの一部の国が採択しています。
今般のCOVID-19パンデミックを契機に、AHA・SHAいずれの体制下においてもパンデミック対策の有効性について論争が生じていますが、いまだに決着を見ていません。そこで、両体制下における危機管理政策の比較を目的として、日米のパンデミック対策文書を対象とし、包括的な比較分析を行いました。その結果、いずれの体制も、複数の災害に共通する対処能力と、各災害の特性に応じた個別の対処能力を組み合わせた政策体系を有していることが実証的に示されました。本研究は、これまで、AHAかSHAかという二項対立の議論に帰結しがちであった危機管理体制の政策論争において、両者を組み合わせるハイブリッドアプローチという新しい「現実的」な選択肢を初めて明示的に提示し、パンデミック政策の問題をAHA・SHAの境界定義の問題としてとらえなおすことで、ポストコロナの危機管理政策や、有事の医薬品確保等の経済安全保障政策立案に資するものです。
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