ワーキング・ペーパー 「プリンシパル・エージェント問題は解決されたか 習近平の軍事改革と中国の党軍関係」を掲載しました

外務省外交・安全保障調査研究補助金事業「経済安全保障分野における主要国の動向(米中欧)と日本が採るべき政策」プロジェクトの報告として、ワーキングペーパー「プリンシパル・エージェント問題は解決されたか 習近平の軍事改革と中国の党軍関係」”Solving What Principal-Agent Problem? Reassessing Military Reforms and Party-Military Relations in China“(林載桓/青山学院大学)を掲載しました。

(概要) 本稿の目的は、習近平政権下で進行している軍事改革を中国共産党と人民解放軍の関係に焦点を当てて分析することです。本稿では、プリンシパル・エージェント理論を中国の事例に適用し、軍事改革の動機、政策プロセスの特徴、そしてその不均衡な帰結について一貫した説明を試みます。具体的には、中国の党軍関係において「過剰な権限委任」と「外部監視の欠如」という二つの制度的問題が存在し、これが一連の改革をもたらした要因であることを指摘します。習近平による近年の改革は、主に前者の問題に焦点を当て、戦闘能力の強化を目的とした大規模な組織再編を実現しました。しかし、外部監視の欠如という問題に関しては、成果は極めて限定的です。このように改革が異なる帰結をもたらした背景には、軍に対してより個人的な統制を強めようとする習近平の意図があります。党軍関係の個人化が進めば、エリート政治はもちろん、軍の戦闘能力にも深刻な影響を及ぼす可能性が高いのです。

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