月経随伴症状に伴うQOL低下及び労働損失の構造化とプログラムの改善効果の検証

【東京大学倫理審査専門委員会 審査番号】

23-160

【研究の概要】


日本において、少子高齢化に伴う、労働人口の減少は大きな社会課題であると同時に、女性の社会進出、社会的地位の向上もまた、大きな課題となっている。女性の社会での活躍を推進するため、労働条件の改善、男女間賃金格差の是正、出産育児に関連する支援など、まだ多くの課題が残されているが、女性特有の健康課題、特に月経随伴症状に伴う、身体的、精神的、社会的な諸症状の改善による労働パフォーマンス向上の観点から、この課題にアプローチする研究は少ない。
Tanaka, Momoeda, Osuga, Rossi, Nomoto, Hayakawa, Kokubo, & Wang(2013)による,21,477人の女性を対象にインターネット上で実施された大規模な調査の結果では、月経随伴症状による通院費用、市販薬の費用と労働損失を合計すると、社会経済的な損失は年間6,828億円、うち労働損失は4,911億円にもなると推定されている。月経随伴症状の改善に関しては、多くの研究が行われているが、主には、症状の消失・改善を目的としたものであり、女性のQOLの向上、労働パフォーマンスの向上を目的とした研究は少ない。
上記、女性のQOLの向上、労働パフォーマンスの向上を目的とした、月経随伴症状の改善の可能性の提言は、Yukari UMEZAWA Takashi MUTO(2014)による、「月経随伴症状に対する新たな心理学的アプローチ ―アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)による援助の可能性―」として、発表されているものの、具体的な調査研究の実施までには至っていない。また、そもそも、月経随伴症状の改善として、心理学的アプローチを主とした研究も少なく、ACTによる介入のほか、セルフモニタリングの実践、セルフケア行動の促進、自律訓練法の適用、月経痛に対する注意のコントロール力を高める技法である Attention Training(ATT;Wells, 1990)の適用、教育プログラムの介入、また、認知行動療法の実践などが存在するが、いずれも一定の効果が確認されるも、さらなる研究・検証が求められる状況といえる。
上記の状況を踏まえ、本研究では、企業の従業員を対象にウェアラブルIoTデバイス活用し、研修プログラムを実践することにより、働く女性の月経随伴症状に伴う労働損失の改善等に、どのような影響を与えるかを明らかにする。

【研究計画書】


研究計画書

【研究機関名・責任者】


東京大学未来ビジョン研究センター 特任教授 古井祐司

【問い合わせ、苦情などの連絡先】


連絡責任者:特任教授 古井祐司
住所:東京都文京区本郷7-3-1
電話:03-5841-0934
E-mail: dh-jimu★ifi.u-tokyo.ac.jp
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